第3章 立ち振る舞いにご注意を
──翌日
「よぉ、直しに来たぜ。昨日は悪かったな。」
「本当になァ。勘弁してくれェ。とばっちりもいいところだ。」
前日不死川のところへほの花を迎えに行った際に壊した玄関を直すために一人で馳せ参じたわけだが、思った通りの苦言を呈されて苦笑いを返す。
自分だって感情をここまで制御できないことがあるのかと驚いている最中なのだ。悪いとは思うがどうすることもできない。
「悪かったって。ほら、直すからよ。」
まぁ、そうは言っても壊したモンはきっちりと直さねぇといくらなんでも失礼だ。
俺は持ってきた材料で玄関の扉を直し始める。
「今日は連れてこなかったのかよ。可愛い可愛い継子ちゃんはよォ?」
「あ?アイツならいま俺の言い渡した鍛錬を死に物狂いでやってる最中だ。」
「ククッ、お前…骨抜きかよォ?」
「はぁ?!テメェ、こっちが下手に出りゃぁ調子乗んなよ?ああ?」
不死川の言わんとしようとしてることは察しがつく。あんな怒り狂って継子を迎えにきたんだ。どう考えてもそう感じるのが常だ。
「説得力ねェぞ。」
「……。お前な、俺の立場になってみろよ!あの容姿で懐かれて毎日一緒にいるんだぞ?!何とも思わねぇ奴がいたら見てみてェぜ!」
「そんなこと言ってるがァ、アイツに男がタカったらまた怒り狂うんだろォ?ククッ。」
もうぐうの音も出ねぇ。
確かにそうだろう。アイツに男ができたとか考えるだけで発狂しそうだし、もしアイツに惚れたとか言う男が出てきたら瞬殺で排除すると思う。
そこまで考えるとハァと玄関にもたれて項垂れた。
「お前、どれだけ嫁増やそうとしてんだよォ。」
「違ェよ。」
「はァ?」
「嫁を増やそうなんざ思っちゃいねぇ。そうじゃねえんだ。」
そんなこと不死川に言ったとしても分かるわけがない。三人の嫁は嫁であって嫁じゃない。
しかし、そんなことは周りにきちんと知らせたわけじゃない。
周りから見たら不死川のように思うのは間違いない。
だからこそ今の俺の状態はおかしいのだ。
どっちつかずなのに気持ちばかり先行して、ほの花を誰にも渡したくないと思ってしまっている。
それがどれほど狡いことなのか理解しているのに抑えられない想いに自分が一番困惑してるのだ。