第22章 今の上官は風柱様です!※
薬草に夢中のほの花だが、それよりも重要なのは自分の栄養状態だ。
土に触れている手もよく見れば、袖を捲り上げている腕から手までが細くなった気がするし、頬から首筋までも筋張ってる気がした。
持っていた水差しで水をかけ出したほの花に今であれば逃げ出すこともないだろうと唐突に聞いてみる。
「…なぁ、お前朝飯は食ったか?」
すると、少しピクっと反応したが、こちらを見ることもせずに視線は薬草に向けられたまま彼女の心臓の音が跳ねた。
「…えと、朝はちょっと食欲がなくて…。」
「なら昼は?」
今の時刻は午後二時を超えたところ。任務後は朝昼兼用になることが多いが、ほの花は割と早く起きていたようだったから一つずつ聞いていく。
「……あ、わ、忘れてました…!うっかりしてました…!」
そう言って立ち上がったほの花の手を掴むと引き寄せて、もう一度その場に座らせる。
下を見たままこちらを一度も見ない彼女に怖がらせてはなんの意味もないと言葉を選ぶ。
「…胡蝶に聞いた。飯食えてねぇんだろ?」
「え?あ…、と…ごめん、なさい…。」
「何で謝るんだよ。」
「…誤魔化そうとしてしまいました。」
素直にそう謝るほの花の背中をトントンと撫でてやると少しだけ視線が絡んだ。
近くで見るとやはり顔が一回り小さくなったようで、ただでさえ小顔なのに掴んだら顔の骨を折っちまいそうだと感じるほど。
「…俺の方こそ、悪かった。気に病んで…飯食えなかったんだろ?」
この際だからきちんとほの花に謝ろうと思い、謝罪をした瞬間、急に顔を上げて胸ぐらを掴まれて体を揺さぶられた。
「ち!ちが!!ちがいます!!宇髄さんのせいじゃないです!!!私が悪いので!宇髄さんは悪くないです!!!」
「おおおおい!!台詞の内容と行動が伴ってねぇ!!」
どこの世界に否定をするために人の胸ぐらを掴む奴がいるのだ。
……目の前にいたけど。
慌てて手を離したほの花が恥ずかしそうに顔を赤らめて下を向いてしまったので、思わず抱きしめそうになったが寸前でとどまる。
しかしながら、好きな女にそんなクソ可愛い顔をされたら男ならば抱きしめて口付けたくなると言うものだ。