第22章 今の上官は風柱様です!※
ほの花の体調が芳しくないかもしれないと考えるといてもたってもいられなくて鬼狩りでもないのに慌てて屋敷に戻る。
屋敷に到着するとすぐにほの花の部屋に直行したが、そこには彼女の姿がない。
居間にも
厠にも
台所にも
風呂場にも
どこにもいない。
まさか自分の部屋にはいないだろうと思ったが、やはりいない。
正宗たちに聞いても部屋に戻ったと言われてしまい、途端にまたこの家から出て行ってしまったのではないかと焦燥感に駆られた。
「…あと見てねぇところ…。」
思い浮かべるのは自分の屋敷の全体像。
残すのは庭くらいか…、と自分の部屋から外に向かうと小さな体がこちらに背を向けて座り込んでいるのが見えた。
「っ、ほの花!」
まさか体調が悪くて蹲っているのではないかと思い、慌ててそこまで向かうが、振り向いたほの花はキョトンとした顔をしているものだから肩透かしを喰らう。
「え、宇髄さん?」
その手には何かの苗が握られていて、彼女がその場にそれを植えていたのは明白で顔を引き攣らせた。
「…?おかえりなさい。どうかされましたか?」
「……た、ただいま。」
「しのぶさんに怒られちゃいましたか?申し訳ありませんでした。」
そうやって頭を下げるほの花は継子になりたての頃に戻ったように少しよそよそしい。
せっかく敬語を直させたというのに逆戻りしたことがもどかしいが、これは自分の責任だから仕方ない。
触れて良いか迷ったが、押し倒すわけでもないし、一度だけ頭をぽんと撫でると「大丈夫だ」と伝える。
「…何してんの?」
「あ…お世話を怠ってしまったので枯れてしまった薬草を数日、陽の光に当てようと思ってこちらに移動してみました。」
「あー…悪ぃ、水やってやれば良かったな。ごめんな。」
「な、そんな!宇髄さんは悪くありません!大丈夫です!この子は強いので…!すぐに元気になります!」
そう言ってぽんぽんと土をかけてやり、慈悲深い視線を薬草に向けるほの花は聖母のように美しかった。