第22章 今の上官は風柱様です!※
一難去ってまた一難ってやつでいいだろうか。
手を洗いにいくと言ったほの花の顔は明らかに怯えていた。
忘れていたが、アイツは鬼に強姦未遂をされたのだ。しかもその心の手当てもしてやらずに恋人である俺に突き放された。
今更ながらあの時、何故ちゃんとアイツに向き合ってやらなかったんだ。
あんなことがあってからの突然の抱擁は怖かったのかもしれない。
ひょっとしたらさっき腕を掴まれたことも怖かったのかもしれない。
「…焦りすぎたら、また傷つけちまうよな…。」
正直、先ほどまでは此処ですぐにでも押し倒してやろうと思っていたのだから自分の気持ちは急速に冷却されていく。
今日のところはほの花にあまり触れない方が良さそうだ。持ってきた薬箱を定位置に置いてやると自分の部屋に戻った。
もう何度ほの花を思いながら、自慰をしちまったか分からない。
やっと戻ってきた彼女がまたいなくならないように今度こそこの手で守ってやりたい。
居なくなってしまった継子は取り戻したのだ。
今度は恋人を取り戻すのみ。
もう二度と失いたくない。
部屋に戻ってきたであろうほの花の足音を確認すると、漸くホッとして夜着に着替えて布団に入った。
ここ最近、寝つきが悪かったが、彼女が近くにいると言うだけでいつもより寝つきが良かったようですぐに眠りについた。
昼頃に起きると既に起きていたほの花の周りに元嫁たちが群がっていて、見慣れた光景に頬を緩ませた。
「あ!天元様、おはようございます。ほの花さんを連れて帰ってきてくれてありがとうございます!!」
雛鶴がそう礼を言ってきので、笑って頷くが、そこにいたほの花を見て眉を顰めた。
(…アイツ、あんな痩せてたか?)
元々、華奢なのは知っていたが、昨夜は暗くて此処までしっかり見ていなかったので、まじまじと見ると鎖骨が前よりも浮き出ていて驚いた。
ほの花に確認するため、声をかけようとした時に突然鎹鴉が飛んできた。
「音柱ァァッ!蝶屋敷ヘ来ィィッ!」
それは胡蝶の鎹鴉の艶。
そういえば勝手に連れ帰ってきて伝えるのを失念していた。
ほの花もどうやら同じだったようで顔を見合わせて苦笑いをした。
(…聞くのは帰ってきてからだな…。)