第22章 今の上官は風柱様です!※
「体調悪いですか?風邪まだ治ってないんですか?」
しゃがみ込んだ俺の目の前に同じように膝をつくと心配そうに顔を覗き込んでくるほの花の手を掴む。
この際だから全部聞いてしまえ。
どうせあの男が全て仕組んだことだ。此処までお膳立てされて何も行動に移さなかったらそれこそ男が廃る。
「…不死川のとこじゃねぇんならお前どこに帰ろうとしてたわけ?」
「え?しのぶさんのところですけど。」
「頼まれたのは不死川だって言ってたじゃねぇか。」
「夜中に蝶屋敷に来ていたんです。本当はしのぶさんに頼もうと思っていたみたいですが、たまたま起きていたので頼まれました。」
蝶屋敷…。
そりゃあ何度不死川の家に行ったところで会えないはずだ。
何が「今は会わせられない」だ。会わせるどころかそこにいなかったんじゃねぇか!!
アイツ、ふざけやがって…。
「じゃあ、何だよ。胡蝶の継子になるってことかよ。」
「ち、違います!私は今も昔もこれからも宇髄さん以外の継子になることはあり得ません!ちゃんとしのぶさんにもお断りしましたし、蝶屋敷にだって少しの間お世話になるだけのつもりでした。」
捲し立てるようにそう言い放ったほの花にもう迷いはなかった。
俺は立ち上がるとほの花の手を引いて、来た道とは逆方向に歩き出した。
「…え、え、あの、宇髄さん、どこ行くんですか?蝶屋敷はあっち…。」
「…お前は誰にもやらねぇよ。」
「…へ?え、と、宇髄さん?」
「お前は俺の継子だろうが。……帰るぞ。馬鹿ほの花。」
久しぶりにちゃんと繋いだ手は温かくて既に懐かしい。
それでも少しだけ握り返してくれるほの花に胸が高鳴った。
後ろから鼻を啜る音が聞こえてきたが、止まらず屋敷まで歩いていく。
止まってしまえばほの花に道の真ん中で口付けてしまいそうだったから。
顔を見てしまえばきっと夢中で抱き締めてしまうから。
今はこれだけでいい。
彼女の温もりがあれば。
それだけで自分を取り戻していくように感じた。