第22章 今の上官は風柱様です!※
ほの花が一人になるのを狙って待っていた自分の執着心はかなりのものだと自負している。
しかし、せっかく二人きりになったと言うのに聞きたかったことも、話したかったことも全部出てこない。
久しぶりに会って会話の仕方すら忘れてしまったのだろうかとも思ったが、妙に共にいる空間が居心地が良い。
会話こそないがほの花が近くにいることの満足感で少し心が満たされていく。
それでも、この共有時間もやがて終わりが来るのは分かっていたことだ。
もう後少しで不死川の家に到着すると言う頃、突然ほの花が声をかけてきた。
「…あの、宇髄さん。どこに行くんですか?」
「は?どこって不死川ン家だろ?」
「……へ?不死川さんのお家…??え、っと…何でですか?」
コイツ、俺のことおちょくってんのか?と一瞬顔を引き攣らせたが、振り向いた時のほの花の顔が本気でキョトンとしていて、そこに嘘などないことは一目瞭然。
途端にこちらも首を傾げる羽目になる。
「何でって…、不死川の継子になったんだろ?」
「え?!そうなんですか?」
そうなんですか…?って…?
は?コイツ、大丈夫だろうか。まさか記憶喪失…?まさか先ほどの戦闘で頭でも打ったか?
益々わけがわからないほの花の反応に二の句が告げずにいると彼女がおずおずと質問をぶつけてきた。
「あの、継子とかって自分が知らないうちに勝手になるものなんですか?」
いや、やはりおかしい。
これではまるでほの花は不死川の継子になったことを知らなかったみたいではないか。
「ちょ、ちょっと待て。流石に本人が知らないなんてことはねぇよ。俺は不死川からお前を継子にしたと言われた。お前、知らねぇのか?」
「え?し、知りません!そんなこと一度も…、あ、い、一度だけ言われたことありますがその時丁重にお断りしています!」
そこまでハッキリ言い切るほの花に急に力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。
(…あの野郎…、やりやがったな…。)
突然しゃがみ込んだ俺を心配するほの花をよそに頭の中は不死川にしてやられたという悔しさと心底ホッとして嬉しくてたまらない気持ちが交錯して頭の中は困惑していた。