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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第22章 今の上官は風柱様です!※





薬箱の整理整頓を終えると、少しだけ空が明るくなりかけていた。
もう急ぐこともないので、それを肩にかけてゆっくりと歩き出す。
行きに通ってきた道に足を踏み入れた瞬間、急に薬箱を引っ張られて私の体は後ろに傾いた。

思わず目を瞑ったが、いつまで経っても衝撃はやってこなくて、恐る恐る目を開くとそこにいた人物に驚きを隠せない。


「…え?あ、お、音柱様…?」

「任務は終わっただろ。やめろ、その呼び方。」

「…あ、はい。宇髄さん。」


不機嫌そうにそう言うと取り上げられた薬箱を持って歩いていってしまうので、慌てて後ろをついていく。


「あの、私、持てますので返してください。」

「…聞こえねぇな。」


聞こえてるじゃないか…と此処まで出かけたが、ぐっと我慢して飲み込んだ。背の高い彼が肩にかけているとそれを取り返すことは難しいので、仕方なく「ありがとうございます。」と御礼を言い、お願いすることにした。


──ザッザッ


自分達の足音以外聞こえてこないその空間は天国か地獄かどちらだろうか。
お互い話すこともせずにただその空間を共有しているだけ。
話したいことはたくさんあるのに言葉は出てこない。どれも今話せば、彼に縋り付くような恥ずかしい内容ばかり。

引き際くらいは格好良くしようと決めたばかりなのに彼のそばにいるとその決心はこうも簡単に揺らぐものなのかと自分で自分が情けなくなる。


しかし、先に話しかけてくれたのは宇髄さんだった。


「…怪我、してねぇか?」


それはたった七文字の短いもの。それでもそこに彼の優しさがこれでもかと詰まっていて、懐かしくて鼻がツンとしてしまった。


「大丈夫です。宇髄さんは…大丈夫ですよね。」

「当たり前だろ。誰だと思ってんだよ。」

「…音柱様です。すみません。」


それは本当に短い会話。
しかもそれ以上、私たちは何も話さなかった。
自分達の町に入るまで一言も。


そこにいるのにまるで空気のようだった。
元に戻りたいと願ってもやはり私たちには無理なのだろう。

前を歩く背中が凄く遠く感じた。



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