第22章 今の上官は風柱様です!※
自分の手をチラチラと見つめながら走るが、顔が熱くてたまらない。
久しぶりに握った宇髄さんの手が温かくて泣きそうになった。立ち上がらせるために握ってくれただけなのに、そんなことが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
こんなことでは一生、片想いしている気しかしない。彼に触れるだけで、彼の声を聞くだけで心が躍りだすほど嬉しくてたまらない。
これから救護をしなければならないと言うのに私の心は浮き立ち、ニヤける顔を抑えられなかった。
宇髄さんの言った通り、五分ほど走ると何十人もの人の呻き声が聞こえて来た。
(…いた!急がないと…!)
しかし、怪我人を見れば自然と気が引き締まるのは医療人としてちゃんと心構えできているからだろうか。任務を遂行できそうで少しだけホッとした。
まずは医療班を見つけないと…。
あたりを見回すと一人だけ応急処置をしている医療班を見つけた。
そこに向かうと慌てて声をかける。
「あの、応援に来ました。神楽ほの花です!」
「神楽さん…!!助かりました…!」
「医療班で怪我をしてないのはあなただけですか?」
「そうなんです…。」
「解毒剤を持って来たのでまずは医療班全員に打ってください。見たところ神経系の毒みたいなので10分ほどで効いてくると思います。回復した人から順に手伝ってください!」
彼に持ってきた解毒剤を渡すと重傷の人から順に応急処置を行っていく。
幸いなことに鬼の人数は多くても、そこまで強くなかったのだろう。死者は今のところいなさそうでホッとした。
途中、解毒が間に合わずに心停止した人が何人も出てしまい、蘇生に没頭していたため、応急処置が終わったのはそれから二時間も経過した時だった。
終わった瞬間、ホッとしたのと同時に久しぶりに疲労が心地よく体を包んだ。
応急処置は命に関わることだから怖いと思う反面、助けられた時は本当になんとも言えない達成感を感じることができる。
この時ほど自分に医療の知識があって良かったと思う時はない。