第22章 今の上官は風柱様です!※
──風柱様の命により怪我人多数ですぐに救護者が必要とのことで馳せ参じました──
頭を鈍器で殴られたかのような衝撃に見舞われた。絶対に継子を譲る気などないと断言したというのにほの花は不死川の命令で来たと言った。
(…ふざけんなよ、お前は俺の継子だろうが。誰の命令で来たって…?)
まだ一度もこちらを見ずに頭を垂れたままのほの花にも苛々が募ってしまうが、必死に抑えるが、何も発しない俺に痺れを切らしたのか突然顔を上げたほの花と目が合った。
久しぶりに見た彼女は少し顔がほっそりしたような気がしたが、苛々としていた心が一瞬にして吹き飛んだ。
(…顔見ただけで機嫌治るとか末期だな…。)
その顔は困惑したような表情をしながらもハッキリとした意志を感じた。
「あ、あの…、音柱様。怪我人の方はどちらに…?」
そうだ、誰に命令されたとかは後でいい。
そんなことよりも今は人命救助だ。
ほの花のおかげで柱としての立場を取り戻せたので、心の中で礼を言う。
「…ああ、案内する。」
「はい!ありがとうございます!あ、立てますか?そこまで支えますね。」
すると、怪我をした隊士を支えようとするほの花とその男の間に足を入れてやった。
自分の足が入ったことで距離を取らざるを得なかったほの花が後ろに尻餅を付いてしまったので、手を引いて立ち上がらせる。
「え、あの…?」
「コイツは俺が運ぶからお前は先に行け。此処を真っ直ぐ言って五分ほどで見えてくる筈だ。」
「あ、は、はい!分かりました。ありがとうございます!急いで行ってきます!」
気を利かせて代わってやったと思ったか?
…ンなわけねぇだろ。
お前に触れられるのが例え怪我人であろうと死ぬほど嫌だっただけ。
自分でさえ此処最近、触れることさえ許されなかったと言うのに、他の男に先に触れられてたまるか。
誰であろうとほの花に触れるのは許さない。
自分以外視界にも入れてほしくない。
本当は顔を見た瞬間、どれほどこの腕に掻き抱こうと思ったか。
気軽に抱きしめることもできない今の関係に腹が立って仕方ない。
薬箱を持って走っていくほの花を見送ると若干俺にビビってる男を担いで同じ方向に向かっていった。