第22章 今の上官は風柱様です!※
「先に鬼の首を斬ってくるから待っててくださいね。」
錯乱状態の彼に聞こえているかは分からないが、薬箱をその場に置くと武器を構え直して鬼に向けて地面を蹴った。
陰陽道 最終奥義
鬼門封じ
「白虎、退いて!!」
「御意。」
白虎が鬼から後退した瞬間、私は鬼の首を斬った。やはり格下の鬼で、毒の噴出等は確認できない。
ひょっとしたら前に戦ったことのある鬼のように完全体でなければ毒の血鬼術は使えないのかもしれない。
体が崩壊していく鬼を見届けると、慌てて怪我をした隊士のところに戻る。
「戻りました!今から止血するので。」
「あ、あ、…あ、…お、鬼…は?」
「一体なら今斬りました。」
「も、もう一体は…?」
もう一体?
もう一体などいなかった。最初からこちらから見えていたのは一体のみ。あたりを見渡しても見つけられない。
それよりも出血が酷いから止血をしなければ。
適当な布切れを出して足を強く圧迫する。
ぴくぴくと痙攣している体を見るとこの人も多少毒にやられているようだ。
止血をしたら解毒剤を打たなければ…。
しかし、そう考えてる途中に嫌な殺気を感じた。
咄嗟にあたりを見回すが、見つからない。
しかし、影ができたことで上だと気づいた時には鬼が目視で確認できる位置にいて、慌てて止血中の彼を抱えて避けようとした。
──が、それよりも前に鬼の首が目の前で吹き飛んだことで目を見開いて茫然とすることになる。
(…え?じ、自爆?)
そう感じるほど一瞬で消し飛んだそれにキョトンと小首を傾げるが、次の瞬間懐かしい声に私は腰を抜かしそうになる程驚いた。
「…ほの花?!」
「え…?」
振り向いた先にいたのは、会いたくても会えない、食事も喉を通らなくなるほど愛おしくてたまらない相手。
え、どうして?
──柱が向かってるから
不死川さんが言ったその柱って…まさか
「…宇髄、さん…。」
「何で…お前が此処に?」
確かに聞きたいことは山ほどあるのだろう。
しかし、自分の手は止血中の隊士の脚が握られたまま。
「…あ…、すみません。話は後で…、いま止血中なんです…!」
「は?…ああ、そういうことか。」
私の手元を見て状況を理解してくれたようで宇髄さんはすぐに処置を手伝うために屈んでくれた。