第22章 今の上官は風柱様です!※
産屋敷様の調合を終えると、向かう先は蝶屋敷。
私の帰るところはいま蝶屋敷。
でも、いつまでも此処にはいられないと分かっている。
ちゃんと自分で決めないと。
お金は神楽家の貯えと産屋敷様の配慮によるお給金で困らないのでこの際、家でも買ってしまおうか。
しのぶさんは継子になってもいいと言ってくれたけど、どうしても一番最初にそれは選択肢から外れてしまう。
それは不死川さんであっても然り。
宇髄さんの継子以外になる気がないし、彼の継子であったのに他の継子になるなんて体裁が悪い。
いくら柱間で話し合って良いとなっても、こちらもかなり気まずい。
考えただけでも地獄絵図だ。
それならば…
もう誰の継子にもなりたくない。
普通の一般隊士としてお仕えしながら、薬師の仕事もすれば良いではないか。
その方が宇髄さんとも会わなくて済む可能性が高い。
彼の顔が見たいと思う一方、関係がなくなってしまった以上、必要以上の接点はどうしても避けたかった。
未練がましく、彼に縋ってしまったら恥ずかしいし、困らせてしまう。
女だって引き際が肝心だ。
「アイツは良い女だった」ってふと思い出した時に少しでも思ってもらえるように立ち振る舞いに気をつけなければならない。
蝶屋敷に着く頃には薬のおかげで月経痛もほとんど無く、気持ち悪さも消失していたが、既に夕陽が赤く空を染めている。
それは夕食が近付いていることを示していて、修行よりも修行の食事が待ち構えているかと思うと億劫になってしまう。
月のモノの時は特に腹痛やら腰痛でいつもより食欲は減退傾向にあるが、きっとそんなことは言い訳にさせてくれないだろう。
此処にいるのはしのぶさんだ。
医療に長けている彼女がいるこの場所では必要な栄養を摂れるまで部屋に帰してくれないかもしれない。
下手したら宇髄さんよりも鬼だ。
でも、今の自分にはそれが必要なのだと分かっている分、その厳しさは逆にありがたかったりもする。
不死川さんにも同じことを思ったけど
一人でいたら
きっと
私は死にたくなってたと思う。
こんなこと
絶対にもう言葉に出したら駄目だけど。
ツラくても生きるんだと叱咤激励しても
一人だと私は彼を失ったツラさを受け入れることができなかったと思う。