第3章 立ち振る舞いにご注意を
誕生日のお祝いが不発に終わり、絶望していた私に一筋の光を照らしてくれたのはやはり宇髄さんで、"按摩をしろ"というなんとも容易い願いにそれはもう意気込んだ。
お祝いの席がお開きになると須磨さんに連行されて再び一緒にお湯に浸かり、宇髄さんの部屋の前で彼が戻るのを待っていた。
少し肌寒かったが、特に気にせずそこで正座していたことを思ったよりも咎められてしまったが、心配してくれてるのだと感じると胸が温かくなった。
しかし、ひとたび按摩を始めてしまうと気になるのは彼の逞ましい体。
いや、厭らしい気持ちで見ているわけではないが、今までここまでちゃんと触れたことがなかったので、筋骨隆々のその体は今まで見たどの男性よりも逞しかった。
そもそも男性の裸など父と兄しか見たことないが。
按摩は父や兄にしたことがあったので、その時のことを思い出しながら慎重にやっていたが、宇髄さんに褒められてしまうとにやけ顔が止まらない。
出会ってから迷惑しかかけていない上に、今日は誕生日だというのに怒らせてしまった。何故あんなに怒ったかは不明だが、"継子になったばかりなんだからちゃんと祝え"と言うことなのだろうか。
まぁ、確かに夫婦の時間を継子である私がお膳立てしなくても彼の都合の良い時に「お前ら今日は外泊しろ」と言ってくれれば済むだけの話だ。
"今日はそう言う気分じゃなかった"と言うだけだと思うが、余計なことをしてしまったのは否めない。
だからこそ按摩をしただけだというのに褒められたら天にも昇るほど浮かれてしまう心理は致し方ない。
私的には挽回する機会を与えられただけで感謝以外の気持ちはない。
宇髄さんに肩と足も頼まれたところで、上半身に目を移すと夜着の上からも分かるほどの筋肉の凄さに、いつもはそんなこと考えないのに"あの腕に奥様達は愛されてるんだ…"と変なことを考えてしまった。
取り繕うようにツンと触れてみると急に顔だけこちらを向いた宇髄さんに自分がしたことが恥ずかしくなって目線を逸らした。