第3章 立ち振る舞いにご注意を
「あー、ソコソコ。お前、上手ぇじゃねぇか。」
「え?本当ですか?!わーい!」
ほの花の手が温まったのを確認してから離してやると"待ってました"と言わんばかりに顔を輝かせて布団に横になれと言う。
いや、分かる。
それを目的に来ていることは重々承知だが、部屋の中で二人とも風呂上がりで夜着を身につけて布団の上…。
どう考えても厭らしい考えが過ってしまうのは仕方ないだろ?俺とて柱とは言え、ただの成人した男だ。
そう言う気持ちがないわけがない。
ましてやこの女の外見の破壊力ときたら最強という以外の言葉が見つからない。
しかし、グイグイと引っ張られて布団に寝かされるとあろうことか俺の腰あたりに「よいしょ」と乗っかりやがった。そんな体勢になってしまえば、自ずとほの花の柔らかい体が自分の体にまとわりつくわけであって…。
鬼と戦うときは隙など見せないように気持ちを引き締めているが、今は別の意味で理性を総動員させて気持ちを引き締めている。
下手したら己の欲望が爆発してしまう可能性がある。無の境地を悟らなければこの局面を乗り越えることは不可能。
俺は心を無にして深呼吸をするとほの花の感触を考えないようにひたすら喋り倒すことにした。
それが唯一の俺に残された逃げ道なのだ。
──そして、冒頭に戻ると、
ほの花はまぁまぁ按摩が上手くて、風呂で柔らかくなった筋肉を解きほぐすようなそれはアレほど理性がもたないかもしれないと思っていたのに、逆にこのまま寝てしまうのではないかと思うほどの心地よさ。
「いやー、マジでイイ。肩と足も頼むわ、ほの花ちゃん。」
「はい!分かりました!」
漸くホッと一安心できたかと思いきや、肩の按摩を始めると何を思ったのかツンと俺の腕を突っついたのだ。
「何だよ?どうした?」
「あ、ごめんなさい!こんな逞しい腕見たことないのでつい触れてみたくなってしまいました…!」
どうやら触れたのは無意識下だったようで恥ずかしそうに俯くとそのまま肩の按摩を始めたほの花。
しかし、照れたように顔を赤くするアイツの顔を見てしまうと落ち着いていた理性が再びむくむくと欲に押し潰されそうになった。