第22章 今の上官は風柱様です!※
こんな感覚に襲われたのは人生で二度目。
一度目は家族を含め里のみんなが全滅したとき。
そして二度目はいま。
大事な大事な宇髄さんを失った。
どうやら私は精神的に落ち込むと食欲が無くなるのだろう。今回も今回で全くお腹が空かないのだ。
一昨日不死川さんにもらったおはぎを頑張って食べてからそれがまだ胃の中に残っているような感覚すらあり、胃腸の調子が悪いのは明白。
「…どうしよ…。胃薬とか飲んだ方がいいかな…。」
だが、そういう問題でもない。
結局、根本的な問題を解決しなければ胃薬を飲んだとて全く意味がない。
イタチごっこに見舞われるのが関の山。
結局のところ、少しでも食べて胃を動かしておくことが大事なのだが、どうも食べる気が起こらない。
宇髄さんと初めて出会った時に彼の胸で嘔吐してしまってからまだ一年も経っていないなんて驚きだ。
あれから私たちにはいろんなことが起こり過ぎて頭がついていかないのも仕方ないと思う。
継子になって
恋人になって
婚約者と呼んでもらえるようになったのに
もう継子でも、恋人でも、婚約者でもない。
こんな短期間で様変わりしてしまった私たちの関係は無常にも事実で、それを受け入れるために体は必死なのだろう。
初めてできた恋人にしては少し格上過ぎたのだ。
あんな美丈夫で、強くて、男気があって、優しい人を恋人にできただけでも私は物凄く運が良いし、周りの女子たちから羨望も眼差しを受けること間違いなし。
たかが里から出た田舎娘にしては本当に運が良過ぎて、一生分の幸せをこの短期間でもらったかと思えば彼との恋人期間は自分の中の武勇伝になる。
ひょっとしたら生まれて初めてできた最後の人かもしれない。いや、恐らくそうだけど。
だとしたら私の人生でたった一人愛した人は世界で一番素敵な人だったと声を大にして言える。
そんな人の婚約者だったことを胸を張って生きようと思うことにしよう。
「昼ごはんは絶対食べよう…。食べないと体が弱っちゃうや。」
どんなにつらくても明日はやってくる。
明日がやってくるということは鬼舞辻無惨を倒さない限り鬼狩りも続く。
そんな時に体を弱らせている暇はないのだから。