第22章 今の上官は風柱様です!※
「二人とも精が出ますね。そろそろごはんですよ。」
一時間の鍛錬を終えるとしのぶさんが来てくれて、タオルを渡してくれる。お礼を言ってそれを受け取ると彼女が朝からとんでもない爆弾を投下した。
「ほの花さん、私の継子になりませんか?カナヲとも仲が良いし、二人で鍛錬すると切磋琢磨できていいと思うんです。」
「………えええ?!え、いや…それは…。」
行く当てもないし、宇髄さんのところにも戻れない私からしたら願ったり叶ったりの有難い申し出の筈なのに、私の心臓はバクバクと煩い。
「わぁ、ほの花ちゃんと姉妹弟子になれるなんて嬉しい。」
「そうね。カナヲもそう思うわよね?」
「ちょ、あの…ちょっとだけ、待って…ください。まだ心の余裕がなくて…その…。」
もちろん申し出は嬉しい。
出来ることならば此処において欲しいという気持ちはあるのに、僅かに残った自分の中の欲望が顔を覗かせるのだ。
──宇髄さんのところに戻りたい──と。
彼のことがなければ私はすぐにでも承諾しているだろう。むしろそんなこと望んでも難しいことが多いのに有難い以外感情はないというのに。
それでも宇髄さんのそばにいたいという欲が消えずに、決断できない私はなんて強欲な女なのだろうか。
「そうですよね。大丈夫です。宇髄さんのことが吹っ切れたらで。私はいつでも大歓迎ですので。ね?カナヲ。」
「はい!師範!」
にこやかな二人の笑顔に申し訳なくて深々と頭を下げると、滴る汗を拭い取りため息を吐いた。
「さぁ、二人とも着替えて朝食を食べましょう。」
「はい、師範!」
「あ、えと…私は、朝は大丈夫です。ちょっと食欲がなくて…。ごめんなさい。」
食欲がないのは本当で、不死川さんの屋敷でおはぎを食べて以来、全くと言って良いほど食事が食べたいと思えなくなってしまった。
すると、徐にしのぶさんが私の顔をペタペタと触り、心配そうに見上げて来た。
「熱はないようですが、大丈夫ですか?体調が悪いんですか?」
「え、といや、違くて…!朝はあんまり食べられないだけです!大丈夫です。」
そう、体調が悪いわけではない。
ただ食べる気にならないだけ。
尚も心配そうに見上げてくるしのぶさんをなんとか説得すると一人部屋に戻ることにした。