第22章 今の上官は風柱様です!※
──そういや、宇髄の野郎が風邪ひいたっつってたなァ ──
私が彼の家にお世話になり出してから、宇髄さんが体調崩しているのを一度も見たことない。
何なら風邪をひかない人なんだと思っていた。
それなのに風邪?!
大丈夫なのかな…。
熱はあるのかな?頭痛いとか…節々が痛いとか…。
あ、でも治ったって…言ってたけど。
そんな早く治る?!
私なら一度風邪ひいたら三日はかかる。
昨日ひいて、今日もうピンピンしてるって…そんなことあり得る?
思い浮かぶ姿は確かに丈夫そうな彼だけど、風邪をひくくらいなんだから抵抗力が弱くなっていたのかも…。
やっぱり無理してるのかもしれない…。
私、薬置いてきていたっけ…?
宇髄さんには痛み止めは任務に持って行ってもらってたからあると思うけど、風邪薬は渡してない。
でも、雛鶴さん達に渡したことがあるからもらってるかな…。
もう頭の中は宇髄さんのことばかり。
こんなに考えるならもう帰ってしまおうか…。
どうしようどうしよう…。
迷いに迷って頭を抱えていると不死川さんが帰ってきて一旦帰ると言うのでそれを見送った。
帰りがけに「あんまり思い悩むなよ」と頭を撫でてくれて、本当にその姿がお兄様のようで少しだけ心が落ち着いた。
折角彼が薬箱を取ってきてくれたのに、今帰ったら何のために取りに行ってもらったのか分からない。
私は頭の中に湧いて出てくる宇髄さんを振り払うと薬箱に向き合った。
(…明日は産屋敷様の調合の日なんだからちゃんとしないと。)
その箱を開けると無意識に風邪薬に手を伸ばし、十包取ると外に避けた。
──何のため?
……知らないよ。
続けて傷薬や痛み止め、解熱剤など日常的に常備していた方がいいものをまた取り出す。
──何のため?
……知らない。
体が勝手に動くんだもん。
勝手に避けた薬を包むと畳の上にそれを置き、見つめた。
避けたところでどうするつもりだ。
まさか届けるつもりではないでしょ?
さっき不死川さんに取りに行ってもらった意味がないと思ったばかりなのに?
私は大量に取り置いた薬の包みを暫く茫然としたまま見ていた。
行くことも行かないことも決められないまま夜になるまでずっとそれを見続けていたのだ。