第22章 今の上官は風柱様です!※
"宇髄が風邪をひいたらしい"ということを端的に話しただけなのにほの花が顔を真っ青にして固まってから数分が経過した。
荷物を取りに行って届けてやったら、明らかに宇髄の様子を気にしているほの花。
だが、此処で本当のことを話したら折角考えた作戦が元も子もないので、グッと耐えて敢えて知らないフリをした。
その代わり、世間話程度のつもりで"風邪ひいたってよ"と伝えただけなのに、見るからに"心配でたまりません"と顔に書いたまま固まってしまったほの花に少しだけ笑いが込み上げた。
(…そんな心配ならもう帰ればいいのによ。)
頭の中で悶々と考えているほの花が覚醒するのを待っていたが数分経ってしまったので見兼ねて顔の前で手を振ってやった。
「おーい、起きてるかァ。」
「っ、は、ああ!はい!起きてます!すみません…、え、と、宇髄さん、大丈夫、なんですか?」
「あァ、さっき行ったらもう治ったとか言ってピンピンしてたぜェ?」
「そ、そんな早く治りますか?!無理してるんじゃ…、症状は?どこか痛いとか言ってませんでしたか?!」
矢継ぎ早に聞かれるのは宇髄の体のことばかり。しかし、それ以上のことは俺も聞いていなかったのでほの花が求めてる答えは持っていない。
しかしながら…
(…そんな心配ならもう帰ればいいのによ。)(二回目)
居ても立っても居られないようで椅子に座ったり、立ったりを繰り返すほの花に心の中で呟いた言葉を言ってしまおうか迷った。
しかし、それを言う前に部屋の扉がガラッと開かれると、そこに居た胡蝶の姿に顔を引き攣らせた。
何故ならばニコニコと笑顔の中にドス黒い感情が垣間見えただけでなく、眉間に皺が寄っていたからだ。
「あら、こんにちは。不死川さん。ちょっとお話が…。」
手招きをするその姿は小さい女の筈なのに後ろに不動明王が見えた気がした。
(……はァ…。此処でもドヤされるんかよ。)
身から出た錆の部分もあるので仕方なく頷くと、心ここに在らずで宇髄の心配をしているほの花をそのままに部屋を出た。