第22章 今の上官は風柱様です!※
「よォ、持って来たぜ。コレだろ?」
「不死川さん…!あ、りがとう、ござい、ます…!」
お昼を過ぎると、不死川さんが私の薬箱を持って来てくれた。
それを見るとホッとした反面、悲しくもなった。
(…宇髄さん、渡してくれたんだ…。)
──ということは、やはり私のことはもういらないということで。
勝手に傷つく自分の心にもう嫌気が差しそうだ。
自分で取りに行って欲しいと言ったくせに持ってきてくれたらくれたで傷付くなんておかしな話だ。
どこか期待してたんだ。
宇髄さんが「戻ってこい」って不死川さんに言ってくれるんじゃないかって。
何て狡い考え。恥ずかしすぎる。
勝手に期待して、好意で取りに行ってくれた不死川さんに宇髄さんを試すようなことをして。
何という浅ましい女。
「…助かりました。これで…薬の調合ができます。ありがとうございました。」
「おー。よかったなァ。胡蝶は置いてくれるって?」
「あ、はい!置いてくださるそうです。ご心配をおかけしました。」
不死川さんには昨日から迷惑ばかりかけて申し訳ないが、彼のお陰で何とか生きているのだから本当に感謝しかない。
それでも…やっぱり気になってしまうのは宇髄さんのこと。
でも、それを素直に聞くこともできない弱虫な私はまた狡い聞き方をしてしまった。
「…あの、皆さん…お元気でしたか?」
「あ?あー、さぁなァ。一人だけ元嫁には会ったけど、あとは会ってねェからよ。」
「あ……、そ、そうなんですね…!」
"皆さん"なんて言ったから元奥様達のことを教えてくれようとしたんだと思うけど、自分の望む内容じゃなくて少しだけガッカリしてしまった。
自分で聞いておいて何をガッカリしているのだ。本当に虫のいい話だ。
そんな私を知ってか知らずか不死川さんは思い出したかのようにこちらを見て再び話し出したが、その内容にまさか絶句する羽目になるとは思いもしなかった。
「…そういや、宇髄の野郎が風邪ひいたっつってたなァ。冬でも信じられねェくらい薄着の怪物が珍しいこともあるもんだぜ。」
目玉が飛び出るのでは無いかと思うほど目を見開いた私は暫く固まったまま動けなかった。
それほどまでに驚き
そして心配でたまらなかったから。