第22章 今の上官は風柱様です!※
不死川さんの過失は腹が立つが、被害者であるほの花さん自身がこの調子で許してしまっているので第三者である私が声を上げることは憚られた。
それに関してはもう済んだことなのだろう。
いま、考えるべきは彼女の心の内。
良くも悪くも人の迷惑にならないように行動しがちのほの花さんは自身の欲や希望を殺すことを日常的にしている。
不死川さんが頼ってきたのだから宇髄さんの継子として頑張らなければ!と人のためにこうしよう、ああしよう…!という考えが直ぐに出るのは彼女の良いところではある。
それによって今回鬼を殲滅できたのも良かったと言える。
しかし、そのせいで自分と宇髄さんの関係が崩れてしまっているのに、それを取り戻そうと思う意欲が圧倒的にない。
本心では戻りたいと思っているのは分かるが、そこにブレーキをかけているのは彼女自身の自信のなさなのだろう。
小さな小さな集落で生まれ育ち、良くも悪くも自分を知らずに生きてきたほの花さん。
それがつい最近、神楽家の女性にのみ伝わる稀血のことを知ったり、その能力を戦闘で目の当たりにしたり。
知らなかったことを知る恐怖と闘いながら日々過ごしていたのであれば大変だったと思うが、本心では戻りたいと願っているのにそこに踏み込む勇気がない。
普段はニコニコして明るい彼女だが、里が全滅したことでこれ以上自分の前から人が居なくなることへの恐怖心が消えないのではないか。
だからいつもどこか遠慮がちで…
嫌われないように
居なくならないように
大切だからこそ本心を言って嫌われるくらいならこのままでいい。
そう思ってるのではないか。
宇髄さんの件も別に継子じゃなくなっても彼が生きてるだけでいい。別にそこまで望まなくても…と遠慮している気しかしない。
だからこそ彼女に必要なのは自分で選択する勇気だ。
彼女が思う選択をして笑顔になるのであればそれが正解だ。
あとはほんの少しだけ勇気を出すだけ。
宇髄さんのところに戻りたいと言える勇気を持つだけ。