第22章 今の上官は風柱様です!※
しのぶさんは忙しいだろうに、仕事がひと段落したらすぐに話を聞きに来てくれた。
ずっと泣き続けているせいでもう頭も痛いし、目も鼻も痛い。
「…で?その泣き腫らした目と頬の赤みはどうしたんですか?」
「頬の赤み…?え?」
「え?って…、両頬赤いですけど?宇髄さんに殴られたわけではなさそうですね。」
「そ、そんな!宇髄さんは!女性に手を挙げるような事絶対にしません!!」
そもそも頬に怪我をした覚えもないので首を傾げることしかできない。
私のその様子を見て、しのぶさんが頬を撫でてくれた。
「痛みはないですか?」
「はい。全く。」
「ぶつけた…というより摘まれたような感じな気がしますが、身に覚えないです?」
「…摘まれ……あ…。」
(…そう言われれば…。)
そこまで言われて、やっと身に覚えのあることを思い出す。
昨日、不死川さんに摘まれたことを。
しかし、それに関しては自分の問題発言が原因だし、彼は全く悪くない。あの時、叱ってくれなかったら最悪な末路を辿ることだってあり得たかもしれない。
精神的につらかったからと言って、簡単に"死ねばよかった"なんて絶対言うことは許されない。
自業自得なのだ。
「…摘まれましたけど…、自分の責任なので…、これは自業自得です。」
「?宇髄さんに摘まれたんですか?」
「え、えと…不死川さん…です。」
「はい?どういうことですか?最初から説明して下さい。」
ニコニコと笑っているのに、何故か逆らうことなどできなさそうな絶対君主感を急に漂わせるしのぶさんに慄いた。
「…あ、あの…、話せば長くなりますが…。」
私はそう前置きした上で、しのぶさんに事の次第を全て話すことにした。
時系列も順序立てて何故こうなったのかということを彼女の顔色を窺いながら話して行く。
稀血のこともしのぶさんには言った方がいいと思ったので不死川さんからは他言しない方がいいと言われたが、独断で話すことにした。
そもそも治癒能力を知っているのは宇髄さんとしのぶさんだけ。
しのぶさんが知っていることは宇髄さんにも伝えていないが、彼女にだけは体のことは伝えた方が良いと私の中でぼんやりと想っていたから。