第22章 今の上官は風柱様です!※
不死川さんの家を出ると足取り重く、しのぶさんの家に向かった。
ただ歩くと言う単純な動作ですら億劫で、自分がいまひとりぼっちなのだと実感させられて悲しくなる。
寝ても覚めても宇髄さんのことばかり。
もし、万が一彼が新しい継子を迎えたら…
新しい恋人ができたら…
私の精神は崩壊する気しかしない。
そうなったらもう鬼の殲滅などどうでもいいとすら感じてしまう。
彼がいたから
彼がそばにいて支えてくれたから出来たことがあまりにたくさんすぎて一人になったことがなかなか受け入れられない。
"強くなる"なんて昨日安易に意気込んだが、無理だとしか思えない。
だって
まだあなたを想って涙が溢れてくるから。
枯れ果てることはないのだろうか。
私は人にジロジロと見られながらも
涙を拭くことなく歩みをすすめた。
──蝶屋敷
「…よくその状態で、この日中に歩いて来ましたね…?目は真っ赤ですし、涙でぐちゃぐちゃですよ。」
しのぶさんが言っているのは最もだ。
確かに顔はぐちゃぐちゃな筈だろう。
見ていないから分からないけど。
「…ひっく、しのぶ、さぁん…、こ、此処に…置いてくださ、いっ…。」
「…どうやら話を聞く必要がありそうですね。どうぞ、入ってください。まずは涙を拭いて。可愛い顔が台無しですよ。ああ、宇髄さんは泣き顔も可愛いって柱に言い回ってましたけどね。」
しのぶさんが宇髄さんの名前を出すと、私は益々涙が込み上げてきてしのぶさんの前で声を上げて泣いてしまった。
「ふぇ、ふぇえええん…ひっく、うず、うずいさん、すき、ですぅ…!」
「…やっぱりそっち関連ですか。しかも重傷のようなので…暫く入院して下さい。分かりましたね?」
しのぶさんは察してくれたようですぐに使ってない部屋に連れて行ってくれた。
その間もずっと私の手を引いてくれていて、小さくて可愛らしいしのぶさんに泣き噦る大女の私が慰められている姿はきっと異様だったことだろう。
私が泣きながら蝶屋敷に来たと言うことは屋敷中にすぐに知れ渡り、数分後にはカナヲちゃんもアオイちゃんも部屋に来てくれた。
その人の温かさに私は益々涙が止まらなくて、二人に抱きついてしまった。