第22章 今の上官は風柱様です!※
翌日には熱もすっかり下がって、本当に自分は丈夫だと思い知らされたし、少しばかり精神的にも落ち着いた。
昨日、あれからたまご酒を飲みながら正宗達と語り合ったことで自分の中での負の要素が少し溶けてきたような気もする。
最初はコブ付きかと思ったあの三人だが、ほの花と共に受け入れて本当に良かった。
今日一日はゆっくりしてまた明日から任務再開させるか…と決意新たに縁側に出たところで雛鶴が声をかけてきた。
「あの、天元様。今、玄関に不死川様がお見えになっていますけど…。」
「不死川が?」
不死川と聞いて、少し身構えてしまうのはあの日以来だからだ。ここ数日で立て続けに二度目の訪問。
今まで全くと言って来なかったくせにどんな風の吹き回しだ。
「あー、そうか。んじゃ、俺の部屋に案内してくれ。」
「分かりました。」
何の用事で来たのか、この時は見当もつかなかった。
ほの花のことを聞かれたらどうしようか…という困惑はあれど、不死川に対して負の感情は持ち合わせていなかった。
それはあの日この拳で全てチャラにしたからだ。
だから不死川が此処に来た理由を知って動揺して心がモヤつくことになろうだなんてこの時は知る由もなく、そのまま訪問を受け入れたのだ。
「よォー?元気かァ?甘味買って来たぜ。」
「元気じゃねぇよ。こっちは病み上がりだっつーの。甘味なんか食う気分じゃねぇけど、あの三人に渡しとくわ。」
こちらの事情など知ったこっちゃないのだろうが、甘味を買って来てくれたとしてもほの花はいないし、元嫁達の腹の中に入るだけ。
コイツのことだからほの花に詫びのつもりで買って来たのかもしれないが、完全なる無駄足だったようだ。
「はァ?"まさか"風邪でもひいたんかよ。」
「その"まさか"だっつーの。まぁ、もう治ったけどよ。」
「お前…風邪なんかひくんだなァ…?」
どいつもこいつも俺のことを何だと思っていやがる。俺とて愛する女と継子を同時に失ったんだから少しくらい体調不良になるというものだ。
確かに生まれてこの方、"ちゃんと"風邪をひいたことなど初めてかもしれないが。