第22章 今の上官は風柱様です!※
まさかこの男が風邪をひいただと?冬でも袖のない隊服を着て「寒くねぇ!」なんて言っていたこの怪物が?!
あまりの出来事に放心状態だが、それほどほの花のことが気に掛かっているのだろう。
どことなくうわの空の音柱に持ってきた甘味が入った箱を渡した。
こんな弱ってるとは思わなかったのに、今からさらに傷口抉るようなことをしようとしている自分に叱咤激励をする。
昨日の夜、折角決意したのだから遂行しなければ…。
宇髄には申し訳ないとは思ったが、ほの花のためだ…、と向き合った。
──のに、先に話しかけてきたのは宇髄の方だった。
「…ほの花ならいねぇよ。」
「…あ?…へ、あ、あー…そうか。」
「…?何だよ、あんまり驚かねぇのな。」
そりゃあ驚くわけがない。
ほの花は昨日、自分の家にいたのだから。
あまりに大人しい音柱の姿に二の句が告げずに困ってしまう。
しかし、それでは此処にきた意味がなくなってしまう。
「悪ぃ、宇髄。知ってたからよ。アイツの荷物を…取りに来たァ。」
「……は?……何だと…?」
「…ほの花は…俺が継子にすることにした。お前に会いにくいっつーから師匠の俺が代わりに取りに来た。」
「…ふ、っ、ざけんなよ…?!いつ、俺がそんなこと了承したよ?アイツどこに居るんだよ、此処に連れて来い!!アイツは俺の継子だ!!誰がテメェなんかにやるかよ!」
おーおー…恐ろしいほど未練たらたらで。
予想の範疇だが、それだけ心が決まってるなら血眼になってでも探し回ればいいものを。
此処で腑抜けている時間があるのなら音柱・宇髄天元らしく強引に奪いにこればいいのだ。
「そうは言ってもなァ…。お前のとこには戻れないって泣いて縋ってきたからよ。とりあえず暫くは面倒みるわァ。」
「はぁ?!今すぐ迎えに行くから撤回しろ!アイツは俺の継子に決まってんだろ!指一本でも触れたらぶん殴るぞ!」
指一本は触れた。
頭を撫でてやったし、背中も摩ってやった。でも、本来のお前の役目を代わりにやってやったのだから感謝してもらいたいくらいだがな。