第22章 今の上官は風柱様です!※
「少しだけ年上風吹かせて頂いても宜しいですか?」
渡されたたまご酒に口をつけたところで正宗がそう切り出した。
いよいよ苦言を呈されるのだと気を引き締めたのに笑顔のまま話し出す正宗を訝しげに見てしまう。
「男女の関係においてどちらかだけが悪いなんてことはあり得ません。」
「……は?」
「宇髄様だけが悪いわけないんです。ほの花様も考え無しにあなたのことを傷付けたのではないですか?」
「…あー、いや。俺は…男だしよ。」
「関係ありません。どんな事情があれど、ほの花様を甘やかす必要はないです。傷ついたのはお互い様なんですから。それに関してはほの花様もあなたに謝るべきです。そうでなければ我々が叱って来ます。」
「お、おい…ちょっと待て…。」
笑顔のままなのにあまりにもほの花に辛辣な言葉を投げつけるので、どんな顔して良いのかも分からずに戸惑いを隠せない。
こちらが叱られるかと思いきや、ほの花に苦言を呈するのだから俺が慌てるのは仕方ないと思う。
「宇髄様はほの花様にとてもとてもとてもとてもとてもとてもとても優しくして下さった上にこの上ないほど愛して下さって本当に感謝しています。」
"とても"感謝してくれていることは伝わるが、まさか別れの挨拶をしに来たわけじゃねぇよな。
突然感謝の弁を述べられたら些か不安になる。
「ですが、あなたもほの花様に我儘言ったっていいんですよ。あなたがほの花様の全てを受け入れて下さるように。」
その言葉に納得ができるわけではない。
自分の方が我儘をほの花に言ってきた自負があるからだ。
「…いや、俺のがよ、だいぶ我儘言ってたと思うぜ。」
「だとしても一人で責任を負うことありません。ほの花様は鈍感で天然爆裂娘ですが、心の広さだけは天下一品ですから。どんどん甘えてやればいいんです。見た目は可憐ですけど、そこまでヤワなお方じゃないですから。」
最後まで笑顔を崩すことなく話し終えた正宗の言葉にまだぼんやりとしか決意はできていないが、やはり隣にいて欲しいのはほの花だけだと再確認できたと思う。
本物の兄貴ではないが、幼い頃よりほの花を見守ってきた三人の言葉は暖かくて深いと感じた。