第22章 今の上官は風柱様です!※
ほの花を藤の家に置いて一人で帰って来たくせに、彼女の夜着を抱きしめて寝るなんて女々しいことをした。
目が覚めると陽は高く昇っていて、昼だと言うことだけが分かるが、濡れたまま寝たせいでどうも頭痛がする。そこまで酷くはないのは頑丈さだけが取り柄の自分ならでは。
「…自業自得だな。」
しかし、頭痛など殆どしたことがない…というか病気すらしたことがないので、流石に"痛み止めでも飲むか"と懐からほの花が普段から持たせてくれていた薬を取り出した。
もう婚約者どころか継子としてもそばにいることを許されないことに絶望しか感じない。
薬など飲まなくてもどうでも良いとすら思う反面、彼女の証を体の中に入れたいだなんていう危ない発想が勝って、それを飲んだ。
「にっげ…。」
何度か飲んだことあるはずなのに、此処まで苦いと感じたことはなかった。いつもほの花が「苦い〜」と言っているのを馬鹿にしていたほど。
それなのに今日は死ぬほど不味いし、苦い。
その理由を風邪のせいにすると、立ち上がりほの花の部屋を出る。
隊服すら脱がずに寝ていたので、とりあえず自分の部屋に戻り着替えをすると「天元様ぁーー!」と部屋の外から須磨の声がした。
「何だよ、デケェ声で。頭痛ぇんだから静かにしろ。」
完全なら八つ当たりに近い強い言い方になってしまったが、逆に須磨でよかった。
大してそのことに関しては取り合わずに会話を続けてきた。
「え、頭痛いんですか?薬飲みました?って、そう!ほの花さん、知りませんかぁ?!居ないんですぅー!!」
眉をハの字に曲げて、部屋を覗き込んでくる須磨だが、そこにもいないことを悟ると再び俺に向き合った。
「天元様、ほの花さん何時に帰ってくるか知りませんかぁ?昨日から見てないけどお仕事ですか?傷薬がさっき切れちゃったから新しいの欲しいんですよぉー。」
暫くは考えたくないと思っていても考えざるを得ない。一緒に暮らしていたのだ。
コイツらだって急に居なくなったら変だと思うだろうが。
「…アイツはもう帰ってこねぇかもな…。」
「え…?」
「悪ぃ、頭痛ェから寝るわ。起こしに来んなよ。」
そう言うと俺は須磨を押し出して襖を閉めた。