第22章 今の上官は風柱様です!※
「明日、もう一度しのぶさんの屋敷に行って置いてもらえるか聞いてみます。」
「おお、そうかァ。」
素直な女だと思いきや、頑固と言うか自分に厳しすぎるだろと感じる一面を見てしまい、元鞘に戻すことは骨が折れるかもしれないと思い始めていた。
宇髄の方が恐らく簡単だ。
アイツはほの花のことを今、この瞬間でさえ想っているだろうし、コイツが帰れば抱きしめてやると思う。
だが、ほの花は違う。
自己犠牲精神が強すぎる。宇髄の為だと言って自分の想いすら蓋をするような女だ。
俺は宇髄ほど強引にはできねェし、これ以上口を出すことは出来ない。
あの男があそこまで強気だったからこそこの二人は上手くいっていたのだ。
「断られたら此処にいても構わねェからなァ。部屋は空いてるしよ、手なんか出さねェから安心しろよ。」
「ありがとうございます…。お気持ちだけ。此処が嫌なのではなく…!薬師の仕事があるので医療器具があった方が良いので…お気遣いありがとうございます。」
「あー、なるほどなァ。そりゃァ確かにそうだな。」
薬師としての仕事をするならば確かに此処では難しいだろう。医学的な詳しいことはさっぱり分からないが、懸念材料は設備なのだろう。
宇髄の屋敷ではアイツが色々とほの花のために温室やら作ったりしていたし、薬師としての仕事もやりやすかったことだろう。
「…でも、一度は帰らないと…荷物とかもあるし、産屋敷様の調合もあるので…。」
そう言って顔を曇らせるほの花に俺はある作戦を思いついた。
本当ならば面倒だし、回りくどいことはしたくねェ性質だが、今回は少しばかり骨を折ってやるかと重い腰を上げてやることにした。
「…仕方ねェな。直ぐに必要なのは何だよ。」
「え…?えと、調合用の薬箱があれば…。」
「それなら明日俺が宇髄のところへ出向いて取ってきてやらァ。」
「いいんですか…!?助かります…!」
よっぽど屋敷に顔を出しにくかったのだろう。
目を輝かせたほの花は今日初めて笑ってくれた。
この笑顔をもっと見たいであろう男が不憫でならないが、回りくどいことしねぇとこの女は一歩を踏み出せないからな。