第22章 今の上官は風柱様です！※

不死川さんは思ったよりも淡々と話を聞いてくれたが、稀血のことを早く宇髄さんに言ったほうがいいだなんて無理難題を言ってくるので困ってしまった。

宇髄さんのところに戻りたくても戻れないほど酷いことをしてしまったのだから、あの家に私の居場所はない。
彼の隣にいることすら汚らわしいというのに。

不死川さんは呆れたようにため息を吐くとまた顔を両手で掴まれて、急に目線が無理矢理上を向く。


「お前は宇髄の継子に戻りてぇのかァ？それとも恋人に戻りてぇのかァ？」

「…え？…えと、恋人…？」

「じゃあ、俺の継子になるかよ？」

「ええ？！い、いや…流石にそれは…。」

「なら宇髄の継子に戻りたいんじゃねぇの？」


何が言いたいのだろうか。尋問するように矢継ぎ早に言葉を畳みかける不死川さんに私はタジタジだ。

「…ち、違います。そんなの…恋人に戻りたいのは当たり前ですけど…継子だって…本当は戻りたいです…。でも…！」

「お前さ、ちゃんと本音言えやァ。言葉っつーのは言霊なんだ。"もう継子じゃない"なんて言やァ、その通りになっちまうぞ。戻りてェんだろ。アイツんところに。」


戻りたい

戻りたいよ

でも、こんな汚い自分を許せないの。

大好きだからこそ隣にいるのが相応しくないと感じてしまって帰りたいと言葉に出すことも出来なくなってしまった。


「…戻りたい、ですけど…、私、自分が許せないんです。」

「クソ真面目だなァ、お前。まぁ、頃合い見て帰れば良いとは思うけどよ。遅くなれば遅くなるほど帰りにくくなるぜェ？」


不死川さんの話は最もだ。
…だとしても、一人で頑張ると決めたのに簡単に決心が鈍るようなことを言ってきて少しばかり不満も溜まる。


「…いいんです。宇髄さんだって一旦は了承したのだから覆すのは柱としての立場もあるでしょうし…。ありがとうございます。」


「そうかよ」と言うとそれ以上何も言ってこなかった不死川さん。
彼の任務について行ったことでこんなことになって責任を感じているのかもしれないが、これは私と宇髄さんの問題だ。

それ以上でもそれ以下でもない。

巻き込んでしまったことを心の底から申し訳なく思った。