第22章 今の上官は風柱様です!※
「ほの花は何の呼吸を使うんだよ。」
そう宇髄に聞いたことがある。
しかし、宇髄は笑って誤魔化すばかりで、仕舞いには話をすり替えて、頑なに言わなかった。
お館様ですら柱に伏せていたその事実。
きっとただならぬことなのだろうと簡単に想像がつく。
その時は「何で言わねぇんだ」と突っかかったこともあったが、宇髄は「俺の女のことを何でお前に言わなきゃならねェんだよ!」と斜め上の返しが来るので、ただ単にほの花のことを他人に話したくない独占欲だとすら思っていた。
いや、多かれ少なかれ間違いなくそれもあると思うが。
宇髄はほの花の過去を一人知っていてもそれを誰かに伝えることもなく、受け入れていたのだろう。
溺愛していたのは知っていたが、それだけじゃない。何が何でも守ってやるという覚悟を感じた。
それならば…いま知り得たことを俺が他の柱においそれと話すことなど絶対にしてはならない。
宇髄が身を挺して守ってきたたった一人の女の身の上話だ。柱としてならば、共有すべき内容かも知れないが、友人として話すわけにはいかない。
「…陰陽師、なァ…。聞いたことはあるけどよォ。あんまり詳しくねェ。」
「あ、そ、そうです、よね…。」
「おお。だから此処だけの話にしておいてやるからお前も他人に言うなァ。折角宇髄がお前を守ってきたんだろうがァ。話の内容も稀血のことも理解はできるが、あまり他人にはバレない方が良い。お前が危ない目に遭う可能性もある。特に稀血の件は直ぐにでも宇髄に言うべきだ。」
万が一、鬼に嗅ぎつけられたら真っ先に狙われる可能性もある。
そうなればほの花を守りきることは難しいかもしれない。
出来るだけ内密にした方がいい。
しかし、ほの花の表情は浮かない。
それどころか悲しそうに目を伏せて唇を噛み締めている。
「…でも、もう…私は宇髄さんの継子じゃない、ので…。」
…そうだった。
稀血の件でうっかり失念していたが、コイツら痴話喧嘩の真っ最中だった。
お互いをお互いに大切にして、考えちまってるからこそ拗らせまくってる気しかしないが、まずは稀血のこと云々よりコイツらの関係性の修復が急務だ。