第3章 立ち振る舞いにご注意を
──やっちまった。
漸く落ち着きを取り戻しつつある自分の心の第一声は感情の操作が効かずに取り乱したことを後悔する言葉だった。
俺の継子だからといって、他の柱と関わってはいけないことなんてない。そんな規約も暗黙の決まりも存在しない。
それなのにほの花が不死川の家にいると聞いた瞬間、感情が激昂して止められなくて、鬼を追いかけているのではないかと思うほどの速度でものの数分で不死川邸に乗り込んだ。
そこにはほの花と不死川が向き合って談笑していて、今思えば不死川が何かしたわけでもなければ、そこで蜜事が繰り広げられていたわけでもない。仮に何かしたとしても自分の継子が不死川と恋仲となったと言うならば俺の出る幕じゃァねぇ。
勿論、無理やり犯されたとなっちゃァ、話は別だが。そうなりゃ、俺は不死川を殺す勢いで斬りつけるだろう。
しかし、ほの花と不死川はただおはぎを食べていただけだと言う。状況的にも座卓に置かれていた湯呑みには茶が入っていたし、おはぎが乗っていたであろう包みも鎮座したままだった。
ただ茶をしばいていただけと言われりゃ、そこまで激昂する理由はない。
それなのに自分の誕生日に帰ったらほの花はいねぇわ、不死川の家に行ったと言われるわ、二人で仲良く談笑してやがるわ…で、感情の抑制が効かずに、不死川の言う通り俺は殺気立っていた。
"落ち着け"と言われるまで自分がそこまで凄んでいたとは思わなかった。
アイツの言う通りほの花は俺の空気感が怖かったのか見るからに怯えた表情をしていた。途端に今の状況を理解すると、これ以上ここにいたところで何も生み出さないと感じ、早々に立ち去ることにした。
本当に頭に血が上っていたのだと気付いたのは帰る時に自分が破壊したであろう不死川の家の玄関が目に入った時だ。
流石に顔を引き攣らせると心の中で奴に詫びを入れた。