第3章 立ち振る舞いにご注意を
悪いことをしたならば早々に謝る。
先手必勝だ。
抱えられたままで彼の美丈夫な顔がなかなかの近さにあるが意を決して見上げると声をかける。
「あの…申し訳ありませんでした!!ご面倒をおかけしまして…!」
なかなかの近さに顔があると言うことはそんな大きな声を出さずとも聴こえると言うこと。
それなのに私は大音量の声で謝ってしまったことで驚いた顔をして宇髄さんが少しだけ仰反る。
「あ、…す、すみません…。」
慌てて口を押さえるが時すでに遅しだ。
失態の上に失態を重ねて最早罰を受けるのは必至だ。
あまりの不甲斐なさにずーんと項垂れているとハァ…とため息を吐き、呆れたようにこちらを見下ろす宇髄さんが目に入る。
「…ったく、お前なぁ。勝手にいなくなんな。せっかく誕生日なんだから師匠の生誕をお前も直接祝いやがれ。世話の焼ける継子だなぁ。」
「す、すみません〜!わたし的には奥様達と過ごした方が嬉しいかと思いまして…!見当違いをしてしまい、申し訳ありませんでした。」
その顔は先ほどまでの般若のような恐ろしい表情ではなく、いつもの優しい彼の雰囲気でホッと胸を撫で下ろす。
「…だが、師匠に断りもなく他の柱の家に行くのは頂けねぇなぁ?ほの花ちゃんよぉ。あん?」
「え?!ま、まずかったですか?!不死川さんがおはぎをご馳走して下さるとのことで…断る方が宇髄さんの顔に泥を塗ることになるのかと思い…。」
これは…もう終わったと言って差し支えないだろう。
何もかも裏目に出ている今日の私はどんな厄日なのだ。しかも師匠の誕生日に。
「本当に申し訳ありませんでした。どんな罰でも受けます…。」
女心が分からないだのと、あれだけ心の中でいろんな人を馬鹿にしてしまったのにここにきて盛大なしっぺ返しを喰らうこととなった。
分かっていなかったのは私の方だったなんて恥ずかしすぎる。宇髄さんに抱えられていなければ全速力でこの場から逃げたいくらいだ。