第22章 今の上官は風柱様です!※
──稀血
それを聞いてやはり避けては通れないのだと思わされた。
私の血もまた一種の稀血なのだろう。
それが神楽家の女として生まれた宿命でもあり、鬼舞辻無惨を倒すための切り札になると言われ鬼の珠世さんに協力してしまっている。
不死川さんが自らのそれを受け入れて、強く生きている姿を見て私も自分の生い立ちから逃げては駄目だと思わされた。
背中を撫でてくれている不死川さんに向き合うと思いっきり頭を下げた。
「…な、何だよ、突然。どうしたァ…?」
私は誤った報告をしてしまった。
あの時、本当は花飾りで目をついたから血鬼術を破れたわけではない。
自分の血だ。
「…申し訳ありません…!!昨夜の鬼ですが…、私は風柱様と…音柱様に誤った報告をしてしまいました…!」
「は?昨日の?…とりあえず頭を上げろ。ほの花。」
「このまま…どうかこのままお聞きください。」
顔を見るとまた涙が込み上げて上手く喋れない気がした私は頭を床につけたまま言葉を紡ぎ出した。
「…私も…、不死川さんと同じような…稀血の一種のようです。本当は昨日花飾りで目を潰した後、首を斬ろうとしたのですが、技が上手く決まらなくて失敗しました。しかし、私の首を斬りつけてきた鬼に私の血がかかった瞬間、奴の指が吹っ飛び苦しみ出しました。血鬼術を使ったままだと回復が間に合わないと踏んだ鬼が恐らくあの空間を解除した原因です。誤った報告をして申し訳ありませんでした…!」
「…要するに…、お前の血は鬼にとって毒物っつーことか?」
「はい…、すみません。最近この事実を知って…誰にも言っていなくて…。あまりに突然のことで怖くて受け入れられなくて…咄嗟にそのことを伏せて報告してしまいました。申し訳ありませんでした…!」
嘘の報告をしてしまったのだからお咎めがあってもいいのに、不死川さんは頭をぽんと撫でて「そうかァ」と呟いたきり何も発しない。
こんなことならば、珠世さんのことは伏せても最初から宇髄さんにも伝えておけば良かった。
珠世さんと約束したのは鬼である彼女に血を渡して協力しているということを伏せると言うことだけ。
私がこれを言わなかったのはただ自分が受け入れられなかったから。
怖くて怖くて誰にも言えなかった弱い自分のせいだ。