第22章 今の上官は風柱様です!※
漸く涙が落ち着いた頃には陽がどっぷりと暮れていて不死川さんの家に泊めてもらうことになってしまった。
宿屋に行くと言ったのに、取り合ってくれなくて結局使ってないと言う部屋に案内された。
「どうせよ、お前ら元鞘に戻ンだから俺に必要以上に近寄ンなよ。後から宇髄の野郎に問い詰められるのだけは御免だァ…。」
ぶっきらぼうにそう言うけど、不死川さんは結局優しい。お兄様のように見守ってくれているその姿に心がホッとした。
「…不死川さんって…」
「…何だァ?」
「お兄様にちょっと、似てます…。」
「…あ?あー、兄貴いたんだったなァ…。」
「はい。不死川さんは……、ああ、弟さんはいないって言ってましたね。ごめんなさい…。」
聞いたことをまた聞こうとしてしまって慌てて謝るが、不死川さんは考えるようにそのまま動かなくなり、気まずくなってしまった。
泣き過ぎて脳が溶けてしまったのか。この前聞いた時も後で謝ろうと思っていたのに、またうっかり人の過去を蒸し返すようなことを聞いてしまった。
「…弟はァ、いる。」
「え…?」
「この間は咄嗟に…いねェって言っちまったけど、生きてる弟は一人。七人兄弟で残りの弟と妹は…死んだ。」
それは…殆どの弟さんと妹さんは亡くなっているということ。
(…宇髄さんと一緒だ。弟さん一人だけ生きている)
同じように弟さん一人だけ残っているけど、何らかの事情で言いにくかったのだろうか。それを聞いてしまえるほどの精神力は持ち合わせていなくて私は言葉を飲み込んだ。
それでも不死川さんは言葉を続けた。
「ほの花の気持ちは分かるつもりだァ。俺も母親が鬼になって自分でトドメを刺した。お前も父親を…だろ?」
「…あ、…は、はい。父は…鬼となり、兄四人を食べてました…。」
「…うちも母親が鬼になって弟妹を殺してた。だからお前のことはどことなく境遇が似てるから気にかけてた。」
そういうと、ぽんぽんと頭を撫でてくれる彼に重なるのはやはり兄の姿。
そのぬくもりは宇髄さんとは違うものだけど、いなくなってしまった兄たちを彷彿とさせてまたもや涙腺が緩みそうだった。