第22章 今の上官は風柱様です!※
宇髄の想いが強すぎてほの花は正直、少し呆れているのかと思っていたが、どうやらコイツらは似たもの同士らしい。
宇髄のことを想い過ぎて泣き叫び、共にいられなければ生きていても仕方ないとすら言うほの花。
此処に来たのはおはぎの為ではなく、あの男への愛を叫ぶために来たのではないかと思うほど。
出るわ出るわ、宇髄への愛の言葉に若干の胸焼けがしてきた。
"宇髄さん宇髄さん宇髄さん宇髄さん宇髄さん…"
いや、聞くとは言った。
聞くことが贖罪になると思ったからだ。
でも、泣きながら柱仲間への愛を叫ばれるのは自分の家の玄関前。
かれこれコイツの弱音…いや、愛の告白を聞き続けて30分が経つ。
涙で顔はぐちゃぐちゃだと言うのに宇髄の名前を出すだけで永遠に泣いている。
もうこのままアイツの家に置いてこようかと思うほど。
しかし、今回はコイツだけの問題ではなく、宇髄も宇髄で一旦は了承したっつーなら、あっちも病んでるのだろう。
世話の焼ける奴らだ。
痴話喧嘩は犬もくわねぇし、俺も本来関わりたくないのに、今回ばかりはきっかけを作った責任がある。
そろそろ懐に入れたおはぎでも食いたくなったし、とりあえず中に入れてやろうと摘んでやっていた頬を離す。
そもそも摘んでいたことすらうっかり忘れていたが、真っ赤に腫れ上がっていたほの花の頬を見て「やべ…」と思ったが、どうせこのまま宇髄のところに帰すわけではない。
突然、頬を離したことで吃逆を上げながらこちらを見上げるほの花にもう一度と中に入るように促すとおずおずと入ってきた。
「…ひ、っく…宇髄さん…。ひっく…。」
「はいはい。とりあえずおはぎ食えェ。頬摘み過ぎたから後で冷やしておけよ」
「おはぎ…っ、う、宇髄、さんよく甘味買ってきて、くれ…ひっく…。」
「………。」
駄目だこりゃ。
何をするにも宇髄の奴が思い浮かぶようで、まだしばらくこのまま泣き続けることだろうと予測が立つ。
無遠慮に泣き喚いた割には丁寧に履物を揃えるほの花に育ちの良さを感じたが、泣きながらおはぎを食べるせいで自分の家なのに死ぬほど居心地が悪かった。