第22章 今の上官は風柱様です!※
泣きながら弱音を吐く私を見て不死川さんがこちらを見るとため息を吐いた。
呆れたような目をして、近づくと「歯ァ食いしばれェ」と呟き、その言葉の意味を理解する前に両頬が彼の両手でバチン──っと叩かれた。
いや、叩かれたと言うより手を頬に叩きつけて顔を掴み上げられたと言うのが正しい。
あまりの痛さで目を見開いて彼を見た。
「…し、しなじゅがわしゃん…いたいでひゅ…。」
柱の腕力?握力?が全顔面に注がれたのだ。痛いに決まっている。
目に溜まるのは悲しみの涙ではなく、完全に痛みによるもの。
痛みに耐えている私を見下ろすと呆れた顔をした。そして大きく息を吸い込む不死川さんに私は第二波が来るのかと思い、身構える。
「…お前はァ、馬鹿かァアアアアアアッッッ」
「ひょえ…っ?!」
しかし、痛みが来るかと思っていたのに今度は耳がキーーンとなる羽目になった。
あまりに耳元で大きな声で叫ばれたので今度は痛みの涙さえ止まった。
頬は痛いし、耳はキーンとなるし、目の前の不死川さんは怖い顔をしているし。
玄関前でのそのやり取りに私はどうしたものかと体を硬くすることしかできない。
「…何見失ってンだァッ!生きてねェと何の意味もねェだろうがァッ!!宇髄はお前が死んで喜ぶと思ってンのかァッ!!」
「しょ、しょんなことはおもっちぇましぇんっ!」
「じゃあ、変なこと言うんじゃねェエエッ!」
「だって……、宇髄さんに嫌われたらもう生きていたって…何の意味もないじゃないですかぁ…。不死川さんには分からないんですっ!私がどれだけ宇髄さんのことを好きで好きでたまらないかっ!!でも…もう戻れないんです!!」
取り乱して泣き叫ぶ私の頬を尚のことギュムッと摘み続けている不死川さんの目は先ほどよりも優しい。
「…全部吐き出せェ。俺にはお前の罵声を聞く責任がある。」
そんなことを言うものだから折角止まっていた涙は溢れ出して頬を摘む彼の指にも伝ってしまっている。
それでも構わず私は泣き続けた。
彼に心の内を全て曝け出して。