第22章 今の上官は風柱様です!※
──継子にするんじゃなかった
だと?
ほの花から出る発言はまるで宇髄のそっくりさんでもいたのかと思うほど、青天の霹靂。
狐にでもつままれたか?
あの男がほの花を嫌いになるなんてあり得ねェのに、此処まで泣き噦っているということは少なからず本人に言われたことは間違いないのだろう。
流石に妄想癖はなさそうだ。
喧嘩したのであれば仲直りの手伝いくらいさせて欲しいと思っていたのに、どうやら''喧嘩''じゃないらしい。
まさかとは思うが…
いや、でもこの憔悴っぷりは…。
「…まさか、とは思うけどよ、継子を解消したのかァ?」
「…その、ッ、まさかです…。私なんか継子にしたことを後悔していらっしゃったようだったので…、自らの手で手放してしまいました…っ。」
最悪の展開だと思いきや、どうやらほの花から継子解消は申し出たのか?
確認するために歩みを止めるとほの花に向き合った。
「…お前から言ったのかァ?」
「…はい、ッ…。でも…宇髄さんも全然、ッ引き留めては来なかった、ので望んでいたと思います…。」
──それはない。
俺はコイツよりあの男とは長い付き合いだが、宇髄が女に此処までご執心なことを見たことない。
元嫁達のことは大事にしていたと思うが、今とは全く感情が違う筈だ。三人を平等に扱い、贔屓することもないが、激しい愛を感じたこともない。
愛情はあったと思うが、女として此処まで愛したのはほの花が初めてなんじゃねェかとも思う。
だから己から生まれる感情をうまく制御できずに度々頭を抱えているのを見たことがあるし、鬱陶しいが屋敷に突撃されたことも何度かある。
ほの花のことを愛しているからこそ生まれる嫉妬や独占欲。今までと違う激しい感情に一番振り回されていたのは宇髄自身の筈だ。
アイツがほの花を手放すなんてことは考えられない。
これは話が長くなりそうだと踏んだ俺は再び踵を返すとほの花にも歩くよう促す。
こうなっちまったのは俺の責任でもあるのだから今回ばかりはこの二人の世話を焼いてやろうと大きなため息を吐いた。