第22章 今の上官は風柱様です!※
今回の鬼は俺の采配間違いでほの花にも宇髄にも本当に申し訳ないことをした。
殴られたことで自分の中では少しスッキリして切り替えられていたので、事後処理を終えて、一眠りした後のんきにおはぎでも買いに行こうと町に出ていた。
今頃、あの二人は床で身を寄せ合い、愛を確かめ合っていることだろうと当て馬に使われた気すらしかけていた。
それなのにおはぎを買って、帰路に着く途中で見たことのある後ろ姿が目に入った。
(…ほの花?…ンなわけねェか…。)
今頃宇髄の野郎に抱き潰されていると今し方考えたところなのだ。彼女の筈がない。
しかし、ほの花の髪はこの辺りじゃ珍しい栗色で顔立ちも西洋人形のようだから目立つ。
宇髄はいつも男たちの視線を集めがちなほの花にヤキモキしていたのは知っていたし、先ほどの後ろ姿を見ただけでも数名の男が声をかけようかチラチラ見ていたのを確認済み。
(…確認だけするかァ…。)
もしかしたらほの花が薬師の方の仕事があって町にいるのかもしれないと思い直して、先程見た後ろ姿の後を追いかけるとやはりほの花だ。
人混みで先ほどはわからなかったが、しっかり隊服まで身につけていたので間違いない。
慌てて声をかけようとする男どもを睨みつけるとほの花の肩を叩いた。
振り返った彼女の顔を見て驚いた。本物の人形かのように生気はなく、目は赤くて泣いた跡が残っている。
どう考えても宇髄と仲良く情交していたなんて雰囲気ではないのは一目瞭然だし、見つめる瞳からは涙が溢れ出してきたのでギョッとした。
「は?ほの花?!お、おい…どうしたァ?何で泣いてんだよ。宇髄はどうしたァ?」
ひっく、ひっく…と吃逆をしながら何も言わずに泣き続ける姿に頭に思い浮かぶのは昨日の鬼狩り。
それしか考えられない。
コイツが嗚咽しながら悲しくて泣くようなことは宇髄のこと以外では思い浮かばない。
そして、その原因になったのが自分なのだと安易に考えが行きつき俺は頭を抱えた。