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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第22章 今の上官は風柱様です!※





無気力のまま蝶屋敷に向かうが、今まで通い慣れた道も、町も全てが白黒に見えてしまう。
目が悪くなったのかな?と思ったら、よく見たらいつもと同じで脳が勝手にそう見せているのだと気付く。
精神的な衝撃がかなり大きかったのだろう。病にでも罹ったのかと思うほど、私の気持ちは沈み込み一向に上がってくる気配はない。


見慣れた屋敷が目に入り、「こんにちはー」と声を出したとき、久しぶりに声を発したことでかなり掠れてしまっていることに気付いた。


(…泣き喚きすぎた…。)


あまりに掠れていて小さな声しか出なかったので、喉を鳴らし、気を取り直してもう一度「こんにちはー!」と言うと、中からアオイちゃんが出てきてくれた。


「あれ?ほの花ちゃん!こんにちは!」

「アオイちゃん、こんにちは。しのぶさんはいますか?」

「しのぶ様なら昨日からカナヲと任務に行かれていてまだ戻ってないよ。」

「あ…、そっか…。」



不死川さんがカナヲちゃんは任務と言っていたけど、しのぶさんと一緒だったのかと漸く点と点が線で繋がり納得する。

しかし、頼りにしていたしのぶさんがいないとなると此処に置いてくれだなんてことをアオイちゃんに判断などできるわけがない。


「何か用事だった?数日で戻るって聞いてるけど…。」


明らかに落胆した私を見て、慌ててそう言ってくれるので急いで笑顔を作る。


「大丈夫!ありがとう。また来ます!アオイちゃんもまた甘味でも食べに行こうねぇ。」

「あ、うん!ありがとう!」

「それじゃ、また〜!」






──振り出しに戻る



でも、いずれ戻ってくるならばそれまで宿かどこかで過ごして彼女が帰ってくるのを待った方が得策だろう。

今更、宇髄さんのところに行っても入れてくれないと思うし、きっと私のことは顔も見たくない筈。


(…顔も見たくない…、か。)



自分の頭の中で考えた言葉すら涙が込み上げてくる。こんなことで泣いてたらもう一生泣き続けるしかないではないか。


隊服の袖でゴシゴシと涙を拭き取ると唇をかみしめて前を向いた。


振り出しに戻った。
それは宇髄さんと出会う前に戻ったと言うだけ。


私は元々、家族を失ってもう誰もいなかったではないか。


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