第22章 今の上官は風柱様です!※
洗っても洗っても
汚い気がした。
自分の体が汚くて、肌が赤くなるほど藤の家で体を洗ったけど、そのことに気付いたのは宇髄さんに嫌われてしまってからのこと。
悍ましいほどに自分の体が汚れたという事実は頭を真っ白にした。
もちろん快楽のために身を捧げようと思ったことなど一度もない。宇髄さん以外に身を捧げようなんて考えたこともなかったからだ。
鬼狩りのために被害者を増やさないために私なりに考えて仕事を受けたし、宇髄さんを傷つけたかったわけじゃない。
彼が怒っていたのは相手の問題じゃない。
それ自体が嫌だったということ。
私は一度でも彼の身になって考えたことがあるだろうか?
もし…私なら?
彼が他の女性に触れられたら?
彼が他の女性を組み敷いたら?
はっきり言う。
死ぬほど嫌だと。
私はどこかで甘えていたんだ。
"不可抗力だった"
そう言えば全て解決すると。
でも、よく考えたら触れられたことの事実は消えない。そのことを考えるだけで宇髄さんが苦しみ続けるのであれば、私は取り返しのつかないことをしてしまったことになる。
宇髄さんだって不可抗力だということは分かってくれている。だから最初、私に歩み寄ろうと優しく接しようとしてくれたのに。
あのまま彼に甘えて、熱りが冷めるのを待っていればひょっとしたら元に戻れたかもしれない。
それなのに私はいつもと違う彼の様子が悲しくて、本音で話したいからといって彼を煽ったに過ぎない。
元に戻れる機会を自ら棒に振ったのだ。
どれだけ石鹸で体を洗っても私の体に感じるのは知らない男の指や舌。
何度も何度も抱かれている宇髄さんのそれはどうだった?
目を閉じればすぐに思い出せたと言うのに、今思い出すのは最後の宇髄さんのつらそうな表情。
本当は私にあんなこと言うつもりじゃなかったんでしょ?
こんな私なのに許そうとしてくれていたんでしょ?
その優しさを自ら私は踏み躙った。
大好きで大好きでたまらないあなたの温もり。
抱きしめてくれる腕も
広い胸も
優しい笑顔も
もう私のものじゃない。
もうあなたに愛される資格はない。