第22章 今の上官は風柱様です!※
結局、一睡もできなかった上、一晩で涙が枯れるなんてことはなく、朝になっても私の目からは涙が溢れてきた。
(…これからどうすれば良いのだろう。)
宇髄さんと継子の関係を解消してしまったらあの屋敷に帰ることなどできない。
それとも婚約者としてはそばにいても良いのだろうか?という都合のいい考えが過るがすぐにそれは消え去る。
(…鬼なんかに体を弄られた女なんて汚くて触りたくもないか…。)
宇髄さんが優しくて、甘えてばかりいたから自分の身の振り方も考えられないどうしようもない私。
しかし、関係性は変われど鬼殺隊としての任務がなくなることはない。
薬師としての任務もあるし、鬼狩りもしなければならない。
宇髄さんはあれだけの美丈夫なんだからすぐにお相手ができることだろう。私なんかいなくなったところで大したことはない。
正宗達はどうしようか。
彼らは私の元護衛として一緒に来た以上、本来ならば屋敷を出る時に共に連れ立っていくのが常だろう。
しかし、彼らと宇髄さんの元奥様達とは仲良くしているようだし、急な男手がなくなると困るかもしれない。
宇髄さんさえよければあの三人は引き続きお願いしようか。
本当は「許して下さい。此処にいさせて下さい。」と言って縋り付きたい気持ちもある。それを完全に払拭させたのは最後までシていないにせよ、私は宇髄さんの気持ちも考えず、鬼を狩るためならば自分の体は厭わないと考えてしまったのは間違いない。
勿論、あんな鬼とそんなことしたくないし、本当に嫌だった。
だけど、咄嗟に優先順位が低くなったのは否めないし、それは引いて言えば彼との関係の優先順位が低いと思われても仕方のないこと。
私は下がった気分のまま、藤の家を後にするととりあえず当てもなく町に向かうことにした。
最初に思い浮かんだのはしのぶさんのところ。
頻繁に応急処置要員として駆り出されることもあるし、カナヲちゃん達とも仲がいい。
継子にはなれずとも薬師として役に立てるのではないかと考えるとしのぶさんのところが一番良いかもしれないと考えたのだ。
いずれにしても宇髄さんの家に荷物を取りに行かねばならないが、出来れば宇髄さんがいない時間にコッソリ行きたい。
傷口を抉られるにはまだ覚悟ができていない。