第22章 今の上官は風柱様です!※
黒目がちで吸い込まれそうな美しい瞳を見てしまうと俺は掴まれた手を掴み返して無理やりほの花に口付けた。
口内を荒々しく犯して唾液がダラダラ流れていく口付けはお世辞にも心地いいものとは言えない。それなのに抵抗もせずに受け入れるほの花に言葉が勝手に出てきてしまった。
「…勝手に触らせてんじゃねぇよ…。」
「…え…?」
「ヘマしたとか言ってたけどよ、お前知っててこの任務受けたんだろ?何かされるかもしれねぇって知ってたんだろ?期待してたんじゃねぇのか。俺以外に触れられることを。だからわざとヘマしたんじゃねぇのか?!」
──違う
違うに決まってんだろ。
ほの花がどれほど生真面目な女か俺が一番知ってんだろうが。
でも、首筋に赤黒く残る痕が自分の付けたものじゃないという事実にはらわたが煮えくり返ってしまってまともな判断はできない。
「…宇髄さん…。」
「俺に見せつけてんのか。お前じゃ満足できねぇって。それで鬼にまで愛想振りまいて誘惑したっつーなら大層な尻軽女だなぁ?とんだ女を婚約者にしちまったぜ。こちとらいい迷惑だ。」
何も言わないほの花だが、唇を噛み締めて何とか涙を堪えているようにしか見えず遂に目線を逸らしてしまった。
「…俺が来ねぇ方が良かったんじゃねぇの。お前は最後まで可愛がってもらいたかったんだろ?自ら血鬼術にかかったフリまでしやがって。」
「…宇髄さん、がきてくれて、…嬉しかったです。いつも、ありがとうございます。」
──違うに決まってんだろ。
あの状況で血鬼術にかかったフリなどできやしない。そんなこと聞かなくても分かっているというのに。
それなのにほの花が涙を堪えて発した言葉に応えてやることもできない。
「…お前なんか継子にするんじゃなかったわ。お前がいると…俺は柱として職務を全うすることができねぇ。」
…何言ってんだ、俺は。
そんなもんテメェの問題だろうが。
ほの花は何も悪くない。
──クソ格好悪ィな、俺は。
好きな女を傷つけることしかできない最低な男だ。