第22章 今の上官は風柱様です!※
自ら何も発しない宇髄さん。
だけど、こちらから話しかけてみれば笑顔で答えてくれる彼が少し怖い。
「あの…、どうして宇髄さんが此処に?」
「…んー?こっちの任務が早く終わったから。」
「…そうなん、ですね。」
何故だ。
また昔に逆戻りしたように敬語が勝手に出てくる。口角を少し上げて怒っているような顔ではないことが返って怖い。
いつもであれば叱責されるところを不死川さんに一発殴りはしたものの、私に対しては極力丁寧に扱ってくれているのがわかる。
だけど、そこに彼の本音はないような気がしてならない。
「…あと、ありがとう、ございました。最後、仕留めてくれて。」
「…気にすんな。師匠として当然のことをしたまでだ。」
「え、あ…は、はい。」
何だろう。
ちっとも会話が続かない。
それどころか私との会話を極力したくないとすら思えてきてしまう。
彼の返事はとてもそっけない。怒っているなら怒ってくれた方がまだマシだと思えるほどいつもの彼の態度ではないので私の心は乱れるばかり。
そして、いつもは自ら"俺の女"と言ってくれる彼が今日は私を継子扱いしている。
それが宇髄さんとの距離の遠さを感じさせて唇を噛み締めることしかできない。
(…嫌われ、ちゃったのかな…。私がヘマしたから…。)
チラッと盗み見る彼の横顔は相変わらずの美丈夫だが、温もりはそのままに私たちの関係性は此処に来る前とガラリと変わったと言ってもいい。
でも、状況を打開したいと思っているのは私だけではないと信じたかった。
どこにも向けることのできない怒りを彼も心に留めているなら思いっきり怒ってくれていいし、本音で話したい。
「…宇髄さん…。」
「ん?もうそろそろ着くぜ。」
「心配かけてごめんなさい。私は大丈夫だから怒っていいですよ。」
「…は?」
「本当は怒ってますよね?いつもと全然態度違うじゃないですか。私がヘマしたから不死川さんともあんなことになってしまって、申し訳ありませんでした。」
「…ほの花、もう良いから。気にすんなって言ったろ。」
それでもちっともこちらを見ない宇髄さんに悲しくなってきて胸が締め付けられそうになった。
溢れ出す想いを止められない。
藤の家に降り立ったのを見計らうと私は宇髄さんの腕から無理矢理降りて彼と向き合った。