第22章 今の上官は風柱様です!※
「ほの花、後始末は俺がしておくから帰っていい。宇髄、頼んだ。どの道、その格好じゃァ一人で帰るわけにはいかねェだろ?」
「おー、そうするわ。コイツの隊服は?藤の家か?」
「ああ、置いて来たから寄ってから帰ってくれェ。」
不死川にそう言われたので、俺はほの花の体を抱き上げて立ち上がった。
確かにこのままの格好で歩かせるわけにはいかない。
先ほどまでは考えないようにしていたが、目に入るほの花の体からは俺以外の男の匂いがするし、それが鬼だと言うことが死ぬほど胸糞悪ぃ。
それどころか首から胸元にかけては俺以外がつけた所有印の痕。
首には切り傷まで付けやがって
どこを触られた…?
どこに口付けられた…?
無事だと言うことに満足していたと言うのに時間が経てば腹が立つことは変わってくるものだ。
今はほの花に触れたということがクソほど腹が立つ。
それでも怒りを抑えて極力冷静になろうと自分を律する。
「ほの花、他に痛ぇところはないか?」
「えっと…、無い、です!」
腕の中で体を動かして確認すると頷いたほの花。鬼であろうとコイツがクソほど可愛いということは分かるだろうし、今更ながらこの任務に行くことを許可した過去の自分をぶん殴ってやりたい。
しかし、そんなことはできやしないので何とか平常心を保つようにほの花に極力笑顔を向けてやる。
「…よし、んじゃ、ちょっと急ぐからよ。掴まってろよ。」
「は、はい!」
腹ン中にはドス黒い感情が渦巻いていて、鬼を滅殺したところでその気持ちが晴れることはない。
かと言って無遠慮にコイツを抱いて己のそれを解消するわけにもいかねぇ。
一番傷ついてんのはほの花だからだ。
奥歯をぎりっ…と握りしめることで何とか怒りを受け流すが、このまま噛み締めれば恐らく歯が欠ける。
それほどの怒りが自分を襲って、体が震えないように必死で抑えた。
気の利いた言葉をかけてやりたくても何も言ってやれない自分が酷く情けない。
だけど、言葉を発してしまえば、ほの花に酷いことを言ってしまいそうで言えなかった。
ほの花に嫌われたくない。
ほの花にとっての恋人という立場を失いたくなかった。
全ては自分のため。