第22章 今の上官は風柱様です!※
男同士なんて案外スッキリしたもので、一発殴れば気が済むなんてことはよくあること。
しかし、突然泣き出したほの花はそう言うわけにはいかないだろう。
俺が殴られたことに申し訳なさを感じている様子で宇髄の後ろでぽたぽたと涙を流している。
「す、すみませんでした…!私がもっとしっかりしていれば…!不死川さんも殴られずに済んだし、宇髄さんだって怒らずに済んだのに…!」
呆れたように宇髄が目の前に座ってやるとほの花の頭を撫でて抱き締めてやっている。
「…お前のせいじゃねェよ。俺が今回は本当に悪かったァ。巻き込んじまってすまなかったな。」
「それにしてもお前どうやって戻って来れたんだよ。すげぇじゃん。」
確かにそうだ。
宇髄の言葉は尤もであの異空間がどんなものだったのか少し興味もある。抱き締められたままこちらを見上げるほの花の目は真っ赤だが、ぽつりと言葉を紡ぎ出す。
「あの異空間では全ての技が無効化されるようで、私の攻撃はほぼ効きませんでした。それに30分経ってたら死んでました。」
「30分…?」
「途中から空気が薄くなって来たんです。15分くらい経った時点で死ぬかと思いました。もう時間がないと思って、咄嗟に宇髄さんからもらった花飾りで力の限りあの鬼の目を潰したんです…。」
思い出すようにゆっくりと紡がれるその言葉は考えただけでもほの花が孤軍奮闘してくれていたことが伝わって来てこちらの方が申し訳なさでいっぱいになる。
本来ならばこの男にボコボコにしてもらっても構わないほどだ。
「お前、舞扇はどうしたよ?」
「最初の攻撃で吹っ飛ばされて手元になかったんですよ。たぶん、私より弱い鬼だったのにあの空間の中では全てが無意味で、成されるがままでした。」
「話を聞くに…要するにほの花がアイツの隙をついて攻撃したことで血鬼術が弱まって戻ってこれたっつーことだなァ…?」
「…恐らく。ですが、なかなかそこに辿り着けなくて時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。ご心配をおかけしました。」
冷静に分析しているほの花はさすが宇髄の継子だと思わざるを得ないし、頼んだのがコイツじゃなかったら下手したら死者を増やすだけだったと心底感謝した。