第22章 今の上官は風柱様です!※
何故此処に宇髄さんがいるの?という問いに答えてもらえないまま、あっという間に鬼の首を斬り刻んだ彼だが、その恐ろしい形相に私は思わず不死川さんを見た。
しかし、目が合ったかと思うと不死川さんが何故か急に後ろを向いてしまった。
(…え?な、なんか嫌われた?!)
若干悲しくなってしまったが、次の瞬間宇髄さんが目の前にいて、私の着物を直してくれたことで不死川さんの行動の意味を悟る。
「…あ、ありがとう、ございます。」
「…無事だな?」
「え?は、はい。」
「…生きてんな?」
「へ?は、はい。生きてます。」
宇髄さんは胸元から足元までを隠してくれるとちぎれかかった帯を申し訳程度に結んでくれた。
「…不死川。」
「おォ…。」
「一発だけ殴らせろ。それで今回は許す。」
「え…、ちょ、ちょっと宇髄さん…!」
あまりに唐突に後ろを振り向くと不死川さんに向かって"殴らせろ"という宇髄さんに慌てて彼の隊服を引っ張ったが、その手を優しく離させられてしまった。
「お前は黙ってろ。これは柱同士のケジメの問題だ。別に殺し合いしようってんじゃねぇ。」
その言葉にハッとした。
そうか、私は宇髄さんの継子として来たんだ。私が止めることはお門違い。
上官同士での話に私が口を挟むことはできないのと一緒だ。
仕方なくその場に座り直すと二人を見つめた。
「あァ、一発でも二発でも。今回は俺が悪ィからなァ。お前の気の済むまで殴れェ。」
「そうかよ、それなら遠慮なく…!」
──ドゴッ
鈍い音が響いて思わず目を瞑ってしまった。
薄っすら開けた瞳の先に宇髄さんによって吹っ飛ばされた不死川さんが見えてしまって、申し訳なさでいっぱいになった。
私がヘマをしなければ殴られることなんてなかったのに…!
「…おい、起きろ。不死川。」
「何だよ、本当に一発でいいのかよ?」
「一発だけって言ったろ。ほの花が無事ならそれでいい。」
あまりに優しい二人のやりとりに自分の不甲斐なさで涙が出て来てしまった。