第22章 今の上官は風柱様です!※
──トクン、トクン
絶望感に苛まれた俺の耳に聴こえてきたのは心臓の音。
俺のじゃない。
不死川?
いや、違う。これはほの花だ。何度も聞いた事あるそれを聴き間違えるわけがない。
「…ほの花?」
「…?宇髄、どうした。」
「…ほの花は此処にいる。心臓の音が聴こえる!」
それは突然のこと。ほの花が俺に居場所を教えてくれている。
しかし、打つ手はない。居場所がわかったところでこの血鬼術はその場にとどまり、そこに異空間を作るもの。
此処にいるのに手が出せない状況は変わらない。
「間違いねぇのか?」
「ああ、間違いねぇ…!俺が聴き間違えるわけがねぇ、アイツの音を!」
やっと聴こえたほの花の手がかりなのにどうすることもできないと再び絶望感に打ちひしがれていそうになったとき、今度はほの花の声が聴こえてきた。
何を言っているかまでは聴き取れないが、間違いなくほの花。
「…ひょっとして血鬼術を破りかけてんのかもしれねぇ…。そうじゃねぇと流石に音は聴こえねぇだろ?」
「違いねェ…!!クソッ、何も出来ねェなんて風柱として情けねェ限りだ…!」
その言葉は自分にも言えること。
不死川だけが悪いと思う必要はない。
何が音柱だ。
好きな女を守れねぇで柱名乗ってるのがクソ恥ずいわ!!
戻ってこい。
戻ってこい。
戻ってこい。
約束しただろ。
明日は抱き潰してやるって。
その場で臨戦体制を整えて待ち構えていた俺たちの前に首に舞扇を食い込ませたまま悶え苦しんでいる血だらけの鬼と首から血を流して着物を肌蹴させたほの花が現れたのはそれから数分後。
「「ほの花っ!!」」
「…え?風柱様っ!!と、えええ?何で宇髄さんが?!」
ほの花の姿を見た瞬間、俺は何かがプッツンと切れた音がした。
「テメェ、マジでぶっ殺す…ッッ!!」
明らかにナニかをされましたと言うその姿に俺は日輪刀を手にすると怯えた表情をする間も与えずにその鬼を滅殺してやった。
あまりに頭に血が上って俺ですらちゃんと鬼の顔を見てねぇが、見たくもねぇ。