第22章 今の上官は風柱様です!※
町に入るとほの花が見える位置に陣取り、身を隠していたが、ゆっくりと町を歩いていた彼女が鈴を懐から取り出したところを見ていたのに鳴ったのは地面に落ちた時。
「…っ、やっべェ…。ほの花ーーっ!おい!ほの花!何処に行ったァァ!」
クソッ…!血鬼術か。
何処かに異空間でも作りやがったか。
そこに落ちていた鈴を拾い上げると、隣にアイツの耳飾りの片割れも落ちていた。
冗談じゃねェぞ。
こんなん遺品として持って行こうものなら本当に鬼を倒す前に宇髄に殺される。
俺はそれを仕舞い込むと、居なくなったところの周辺を隈無く探した。
しかし、探せど探せど何も出てきやしねぇ。
外側からどうにかできる問題じゃないってことか。
何ならほぼそれしかできねぇんだろう。
外に出てきたならば秒で瞬殺できる筈だ。
問題は一度この血鬼術に取り込まれた場合、どうなるかと言うことだ。
一般人の女も部下の女も強姦された上に一部を喰われた状態で、事切れていたということだけしか分からねェ。
急がねェとアイツの命に関わることだ。
もう一度ほの花が消えたところに立ち戻るが、やはり耳を澄ましてみても声は聞こえねぇ。
仕方なくそこで技を繰り出してみたが何にも当たりやしねぇ。
本当に厄介な技を使ってくれるぜ。
雑魚ほど己の弱さを隠すために面倒な血気術を使ってきやがる。
外からが駄目ならば中からほの花が奴を倒して出てきてくれることを祈ることしかできねぇのか?
「怪我させたらタダじゃおかねぇ」という音柱の姿が脳裏を過ぎると冷や汗が滴り落ちる。
こんなことならば自分が女装でもすれば良かった…。
ほの花が万が一死んでみろ。
柱同士の殺し合い…もしくは柱一人が戦闘不能になる恐れだってある。
「…クソッ、とりあえず何とかして探し出すしかねぇ…。」
「誰を探すんだよ。手伝うか?」
この俺が気配を察知できないほど狼狽えていたのは間違いない。後ろから声をかけられたのが誰かなんて分からないはずもない。
だが、音もなく近付くことに長けているこの男が今だけは別人であってほしいと願わざるを得なかった。