第22章 今の上官は風柱様です!※
ニヤニヤとした鬼の顔が鬱陶しい。
しかし、手首を掴まれて組み敷かれている状態の上、着物が邪魔で動きが取れない。
「…驚いた顔もいいなぁ…。この空間の中ではいくらあんたが強くても暖簾に腕押しなんだなぁ…。だからな、この空間内であんたが俺に勝つ可能性は──無い。」
要するに此処に入ってしまえば、奴の領域。私がいくら攻撃したところで無効化にしてしまうということか。
だけど、絶対に欠点もある筈だ。
考えろ…。
考えなければ此処で死ぬ…。
「だが、こんな良い女なかなか現れないからなぁ。折角だからヤった後、殺さずに取っておくかぁ?」
「…お生憎様。それなら死んだほうがマシだわ。」
「へっへっ、どこまで痩せ我慢ができるか見ものだなぁ?可愛い可愛いお嬢ちゃん。」
そう言うと、首筋に鬼の唇の感触がして全身に鳥肌が立った。
気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い
好きでもない人とのこの行為がどれほど苦痛なのかこの時初めて知った。
あれほど宇髄さんに時と場合を弁えて欲しいと願ったのに、だったらあの縁側での情交なんて今の私からしたら天国だ。
「っ、やめて!!」
「やめねぇよぉ?良い匂いがすんなぁ…。だけどなぁ…あんたからは男の匂いもするんだよなぁ…。」
クンクンと犬のように首から胸を通り…腰、足…そして秘所があるところまで行くと途端に目の色を変えたその鬼に恐怖が過ぎった。
「こんな良い女を独り占めする男がいるんだなぁ?腹が立ってきたなぁ。あんたの此処から男を受け入れた匂いがプンプンしやがる…。」
誰のことを言っているかなんて私がわからないわけないし、そんなこと言う必要もない。
でも、どうやら生娘が好きだったのか。
とんでもなくご立腹の様子だ。
「…それは悪かったわね。唾付きはお気に召さないなら戦いましょ?」
こちらからすれば、襲われてから殺されるよりも、ただ殺されただけの方が屈辱感は少ない。
宇髄さん以外の人の物を受け入れること自体体が拒否反応を示すのだ。
今だって全身に鳥肌が立って止まらない。
「…いんや?唾付きだろうと良い女を抱ける機会なんてないからなぁ?やっぱりお前は殺す。その綺麗な顔はそのままにしてあげるからなぁ?」
振り出しに戻るとはまさにこのこと。
私の体に奴の舌が這い始めて、急に息苦しくなるほど狼狽えた。