第3章 立ち振る舞いにご注意を
「遅ェなァ?お前の護衛。」
そう、かれこれ一刻が過ぎようとしているが一向に現れない正宗達にどうしたもんかと不死川さんの家で待ちぼうけを食らっている。
町に出て探しに行ってはすれ違ってしまうかもしれないので、致し方なくこちらで待たせてもらっているのだがおはぎも食べ終えてしまい、手元に残されたのはお茶だけ。
三度目のおかわりのお茶を啜ると不死川さんがジッと私を見つめてきた。あんこでも付いているのだろうかと顔をペタペタと触ってみるが、何も手についてこない。
「不死川さん…、何か?」
「お前ェ、変わった髪の色してんなァ?」
「え?あ、ああ。そうなんです。母が異国出身でして…。」
「ヘェ、綺麗な色じゃねぇかァ。お前に似合ってる。」
母は私よりもっと明るい色の栗色をしているが、色素が薄いのは母親譲りだ。最初はみんなと違うこの色が好きじゃなかったが、最近では宇髄さんの派手さに影を潜めたことで幾分か気にならなくなっていたので、不死川さんに褒めてもらえて嬉しかった。
そういえば"柱"の女性の方で私よりもっと変わった髪色をしている方がいたことを思い出す。
「ありがとうございます。柱で…桃色の髪色をした方もいらっしゃいましたよね?あの方もとても綺麗なお色でしたね。」
「あァ、甘露寺なァ?アイツは綺麗っつーより変だろ。」
「私は桃色好きなので可愛いと思いますけど、人には好みがありますもんね。」
こんな雑談ができるようになってきたのは本当に回復した証拠だ。何をするにもぼーっとして考え込んでしまっていたのが嘘のようで時の流れが寂しくも嬉しくもあり、感情に名前をつけることができない。
ふと、窓の外を見てみるとだいぶ陽が傾きかけていた。これ以上ここで待っていたら不死川さんにも迷惑がかかる…。
町まで戻ろうと決心をした時、玄関でドゴッという鈍い音が聞こえてきたかと思うと数秒後には般若のような顔でこちらを見下ろす宇髄さんがいた。