第22章 今の上官は風柱様です!※
「風柱様。失礼します。」
襖を開けると不死川さんが座って待っていてくれたので会釈をする。
「おー、いいじゃねェか。鬼殺隊には見えねェなァ。お前、いつもそれくらいめかしこんでたら男が寄ってきて大変だろ?宇髄の野郎が骨抜きなのも納得するぜ。」
「え?全然そんなことないです。私、背丈があるので誰も寄ってこないですよ。デカい女は男性はあまりお好きじゃないのでしょう?」
「そうかァ?ンなこたァねぇだろ。とりあえず行くぞ。ついてこい。話しながら行くぞ。」
不死川さんがそう言って立ち上がったので、すぐに玄関に向かい、外に出る。
すっかり日はどっぷりと暮れていて、暗闇が広がるそこはしん──と静まり返っている。
不死川さんの隣に並ぶが、着物での鬼殺隊任務は初めてのことで歩くにも彼の歩幅に合わせるのも一苦労だ。こんな感じで戦闘になれば折角の着物を破り捨てるしかない…。
「えと、話というのは作戦ですか?」
「あ、ああ…。言いにくいんだけどよォ、今回の鬼は色魔らしい。」
「は、はい?色魔…?え?宇髄さんですか?」
「おーーいっ!!お前、仮にも恋人だろうがァ!!」
思わず、色魔と聞いて先程縁側で押し倒してきた不埒な婚約者が真っ先に頭に浮かんでしまい、つい冗談を言ってしまった。
「すみません。つい…。え?鬼ってそんな性欲が強い奴がいるんですか?性欲よりも食欲なのだと思っていました。」
「色んな種類がいるんだろうなァ。糞不勢がどんだけ種類がいようとぶっ殺すしか選択肢はねェが、今回は男だと出てきやしねェからよ。お前が来てくれて助かったぜ。カナヲにゃ、ちと荷が重いと思ってたからよ。」
「だ、だ、駄目です!!カナヲちゃんにそんな色魔を??!絶対駄目です!!それを聞いてたらカナヲちゃんの前に私のとこに来て欲しかったです!!」
「言ってねぇよ…。流石にこんなこと胡蝶にも宇髄にも言えねェだろ…。だから…お前もこのことは内密に頼む。」
不死川さんの目は本気だ。
確かにこんなことを宇髄さんに知られたら恐ろしくて考えることすら憚られるというものだ。
「もちろんです…。というか言えませんよね。」
「…だわなァ…」
私と不死川さんは二人で遠くの方を見て今はいないその人を思い浮かべると背筋が凍った。