第21章 桜舞う、君との約束※
「ほの花さんの身体に支障があってはいけませんので、200cc頂いてもいいですか?」
「…構いません。それで鬼舞辻無惨が倒せる可能性があるのであれば。」
「今後、貴女と連絡を取るときは茶々猫という使い猫を寄越します。その際に必要であればまた血を頂戴したいです。」
「…わかりました。」
「…そして…このことは…」
「他言無用、ですね。分かってます。」
こんなこと誰にも言えるわけがない。
珠世さんが悪い人でないことくらい分かるが、"鬼"というだけで嫌悪感を抱く鬼殺隊士もいるのだから私がしてることは裏切り行為と思われても仕方ない。
宇髄さんも…咎められるかもしれない。
そう考えたらこんなことを言えるわけがなかった。
(…嫌だな、宇髄さんにどんどん秘密が増えてる。)
勘のいい彼に能力を使っていることも秘密にしているというのに、秘密だけ増えて行ってしまっていることが心苦しくてつらい。
帰る前にどうしてもハッキリさせておきたいことを珠世さんに聞いてみることにした。
「……最後に聞いてもいいですか。」
「どうぞ。私で分かることならば。」
「…里を襲ったのは鬼舞辻無惨、本人ですか?」
「…一人ではなかったかもしれませんが、本人が直々に行ったのは間違いないでしょう。陰陽師一族が"鬼門封じ"を使い、自分が鬼にした者たちを次々と討っていたことを面白く思っていなかったようです。それなのに突然姿を消したことで滅びたと思っていたのに陰陽師の里を見つけてしまったのですから。」
鬼舞辻無惨からしたら陰陽師が生きていたということを自分の目で確かめたかったのだろう。
そしてこの手で始末しなければ気が済まなかったということか。
そこにたまたま私はいなくて難を逃れた。
その時、無惨に殺されていたならばきっと彼を絶命させるのは無理だっただろう。
何のために生き残ったのだろう、と悩んできた。
しかし、纏まらない考えが乱雑に散らばっている脳が言っている。
"珠世さんと出会い、鬼を倒すために生き残ったんだと"
悔しいけど、彼女は薬さえ完成すれば鬼舞辻無惨を倒せる奇策を持っているのだと確信した。